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 国家・地域・業界・企業・組織あらゆる壁が壊れ、共創による新しい価値創造の時代が訪れる

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国家・地域・業界・企業・組織あらゆる壁が壊れ、共創による新しい価値創造の時代が訪れる

2020.10.28

「DIGITABLE LIFE〜ニューノーマル時代の生き方〜」。ソトコトオンラインとMADURO ONLINEの隔週クロス連載。毎月10日にソトコトオンライン、25日にMADURO ONLINEで更新し、Forbes JAPANウェブでも連載が読めます。コロナウィルスの感染拡大は、私たちの生活を変え、経済・社会にも大きな影響を与えています。私たちは「新しい日常」を模索し続け、リモートワークやワーケーション、ネットショッピングの利用など、デジタルを活用することを1つの解決策として生活に取り入れ始めています。第6回目は、デジタル化への壁について紹介していきます。

デジタル庁創設による縦割り行政打破などが、ニュースで報じられ話題になっていますが、歴史を紐解いてみても、常に縦割りの壁は存在し、様々なことがトリガーとなり壁を打ち破るということを繰り返しています。現代においては、そのトリガーはデジタル化の波になります。今回は、壁とは何か、壁はどう打ち壊されていくのか、その先には何があるのかについてお話していきます。

安定が壁をつくり、衝突をうみ、やがて新しい価値が創造される

国家、地域、業界、企業、部門などあらゆる単位の集合体が存在し、互いに壁をつくっています。壁は、その中で安心して過ごしたいと考える人間の知恵から生まれてきたものですが、時間の経過にともない壁は内部を劣化させ、外部との分断を生み、衝突を生んでいきます。やがてその壁は壊れていきます。

江戸時代に日本は鎖国制度により外国との交流を遮断し制限しました。200年以上の鎖国の間、諸外国は近代化が進み、日本は西洋列強国から遅れてしまいました。幕末、日本は西洋列強国との衝突が増え、一歩間違えば国際的な紛争にまで発展するかもしれませんでした。しかし、当時のリーダー達の努力により、諸外国との紛争は回避され、明治維新という自己革新を遂げ、国家の近代化への道を進むことができました。

昭和に入り明治維新以降に近代化を進めてきた日本に、また諸外国との間に壁がつくられ、分断を生むようになってきました。しかし、当時のリーダー達は、明治維新のリーダー達とは違い、安定した秩序の維持を第一に考え、国際的な紛争、そして戦争(太平洋戦争)に突入し、国家は壊滅的なダメージを負い、多くの尊い命が犠牲になりました。戦後、当時のリーダー達の並々ならぬ努力により、日本は奇跡的な復興を成し遂げ、高度成長期を経て先進国の仲間入りを果たすことができました。

これらの歴史から学べることは、人は安定を求めて外部との壁を作ってしまうこと、その壁は内部を劣化させやがて分断・衝突を生んでしまうことです。そして、その先には新しい価値が生まれてくるのです。

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壁の中にいると気がつきにくい壁の存在

私は、ベンチャーから大企業まで様々な規模の企業、様々な業界・職種の仕事を経験したことにより、業界・企業・組織の壁の存在を知り、その中から多くのことを学ぶことができました。

新卒で入った富士通では、若かったせいもありあまり疑問に感じることはありませんでしたが、ソフトバンクに移り、営業として富士通をはじめとする多くのSIベンダーを顧客に持ったときに初めて疑問を感じます。SIベンダーはその顧客である企業にシステムを導入し、顧客のビジネスを発展させることが目的で、顧客にベストなソリューションを提供していくことが必須です。そのためには、たとえ競合企業と手を組んでも顧客のビジネスの発展に寄与するべきです。しかし、現実は、自社製品で固めて顧客を囲い込むことを優先しているように見えました。当時、競合と協力した提案にすべきではないかと説得をしましたが、「競争相手と組む位ならば、商談を落とした方がましだ」と豪語している人もいて、非常識な提案だと叱られることもありました。今では随分と変わってきているようですが、このときに、会社間の壁というものを知ることになりました。

会社を離れ、外から見たからこそ気づくことが出来たのだと思います。自分を取り囲む壁には、壁の中にいると気がつきにくく、外から俯瞰して見ることにより気づくということを学ぶことができました。

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人間の防衛本能が組織・風土の壁をつくる

ソフトバンク時代に書籍EC企業イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を立ち上げました。ソフトバンクはヤフーが急成長し、インターネット企業と呼ばれるようになった頃で、ソフトバンク、ヤフー、セブン-イレブン、トーハンとの合弁会社という話題性もあり、注目を浴びました。しかし、出版業界には不評で、最初は協力を殆ど得られませんでした。「インターネットなんて単なるブームでしょ。本は書店で買うのが当たり前なのだから、余計なことをするな」と追い返されることもありました。その後、会社を出版の街である神保町に移転し、彼らの懐に飛び込むことで、段々と協力を得ていくことができましたが、長い時間を要することになりました。この時ほど、業界の壁を感じたことはありませんでした。新しい挑戦をすると既に既得権益をもつ者から大きな抵抗を受けることを学びました。

また、セブン&アイ時代には、組織・風土の壁を感じることになりました。ネットとリアルの融合を目指して、会社ごとグループ入りしたのですが、巨大な組織の壁に悩まされました。今考えると、IT業界から来た私たちは、異質で理解しがたい存在だったのだろうと思います。「鈴木さんは知らないと思いますが、商売というのは・・・」という言葉を何度聞かされたことでしょう。やがてスマホが登場し、ECも本格化してくるという追い風の中、リアルの小売現場を理解し、新しいメディア商品開発などを手掛け、実績があがってくると、段々と協力してくれる人も増え、オムニチャネルという新しい事業を立ち上げることができました。

今、振り返ってみると、組織・風土などの壁は、人間の防衛本能がつくりあげてきたものだと思います。人は安定を好み、新しいものに恐れを抱き、自分の存在を脅かすもの捉え、排除していこうとするものなのです。

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デジタルが様々な壁を壊し始めている

人間は、安定を求め集団化し、防衛本能により壁をつくり、やがて壁の内部は劣化し、あるキッカケで壁は壊されていきます。それは、歴史を振り返っても、私の体験からもご理解いただけるのではないかと思います。

20世紀末は東西冷戦が終結しグローバル化が進み、新しい世界秩序のもと安定した時代に向かってきていました。90年代後半にはインターネットが登場し、世界中の人々がつながり始め、様々な情報や知恵が国家、地域、業界、企業、部門の間にあった壁を超えて共有されるようになりました。現在も、その流れは益々加速され、インターネット上で、デジタル技術も高度化され、様々な変革が起きはじめています。

日本でも、戦後復興、高度成長を経て様々な企業が興り、成長し安定するために業界が形づくられてきました。しかし、バブル崩壊を堺に経済が低成長となったことにより、業界の壁は既得権益を守るため高くなり、同時に業界の内部は劣化が続き、デジタルの浸透により、その壁は壊れつつあります。

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共創による新しい価値創造がはじまる

私たちは、国家、地域、業界、企業、部門などあらゆる単位の集合体にどこかに属しています。これからデジタル化により既存の壁は壊れ、新しい価値が創造されていきます。それは、情報を共有するという単純なことではなく、あらゆる壁を超えて協調し、ときには衝突しながら、新しい価値を生みだしていく「共創の時代」へと変わってくることでしょう。

デジタルによりもたらされる共創の時代は、時間・距離の制約に囚われない新しい世界です。デジタルを積極的に活用することで、人間の新しい発展があり、それらに前向きに取り組む人々にはチャンスをもたらします。反対に既存の価値に縛られ取り組まない人々は、デジタル化の波に飲み込まれ、時代に取り残されてしまう危険性さえでてきてしまいます。

 私たちは、自らを取り囲んでいる壁にいち早く気づき、自らその壁を壊し、積極的に壁外の人々と協調して、新しい共創価値の創造に取り組んでいけば、新しいチャンスに恵まれることでしょう。

(前回連載はソトコトオンラインのこちらへ)。

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鈴木康弘
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員も兼任。

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