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 エンジニアやマーケターではデジタル変革は難しい。デジタル人材を育成しよう!

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エンジニアやマーケターではデジタル変革は難しい。デジタル人材を育成しよう!

2021.01.26

「DIGITABLE LIFE〜ニューノーマル時代の生き方〜」。ソトコトオンラインとMADURO ONLINEの隔週クロス連載。毎月ソトコトオンライン、MADURO ONLINEで更新し、Forbes JAPANウェブでも連載が読めます。コロナウィルスの感染拡大は、私たちの生活を変え、経済・社会にも大きな影響を与えています。私たちは「新しい日常」を模索し続け、リモートワークやワーケーション、ネットショッピングの利用など、デジタルを活用することを1つの解決策として生活に取り入れ始めています。第12回目は、デジタル変革に必要な人材と採用について紹介していきます。

過熱するエンジニア&マーケター獲得合戦

デジタル変革を目指す企業の増加に伴いエンジニアやマーケターの採用が活発化しています。コロナ解雇が話題となっている2021年初頭時点においても、エンジニア、マーケターともに有効求人倍率は5倍を超えています。他職種の有効求人倍率が1倍前後であるのを考えるとその人気は群を抜いています。数年間システム会社や広告代理店に勤めた程度の30歳前後の技術者が、採用の過熱から1千万円を超える年収で採用されているケースもあります。なんとも、異常な状態になってしまっています。

私はこの状況を見ていると、2000年前後ネットバブル時代の人材獲得の過熱を思い出します。当時、インターネットが本格的に普及されたとき、Webデザイナー、ネットワークエンジニア、ゲームクリエイターなどが脚光を浴びていました。しかし、数年が過ぎ、やがてブームが去ると、採用者は皆ただの人になっていきました。ブームに乗って大量採用した会社は、採用した人材が大きな負担となり、リストラせざるを得なくなりました。現在の状況は、まさにあの頃に酷似しています。やがて、エンジニアやマーケターも一部の人を除いてその価値は落ちついてくると思います。当時と同じ過ちを、繰り返して欲しくないものです。

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エンジニアやマーケターにデジタル変革はできない

人材の採用について、よく相談をされますが、よく相談をされますが、私は「余り高い給与で採用することは無いようにした方が良いですよ。やがて負担になりますから」とアドバイスしています。同時に、「デジタル変革を推進する場合に本当に必要となるのは、エンジニアやマーケターではなくデジタル人材です」ともアドバイスをします。すると相手は不思議な顔をして「エンジニアやマーケターとデジタル変革人材は違うのですか?」と予想通りの質問をしてきます。その時私は「「エンジニアは構築する専門家、マーケターはプロモーションの専門家でしかありません。デジタル人材は業務・システムを熟知し企業にデジタル変革を起こせる人です」と答えます。

デジタル変革は、システム導入やプロモーションをすることではありません。デジタル変革は、デジタル化により既存の企業のビジネスモデルや風土を変えていくことです。ですからシステム構築の専門家であるエンジニアやプロモーションの専門家であるマーケターには、デジタル変革を起こすことはできません。デジタル変革を実現できる人材は、業務・システムを熟知し企業に変革を起こすことができるデジタル人材なのです。

しかし、現在のエンジニアやマーケターの採用が過熱している状況は、滑稽にさえ思えてしまいます。本当に必要なデジタル人材は採用せずに、ITの専門家やプロモーションの専門家ばかりを高い給与で採用しているからです。そんな余力があるならば、社内でデジタル人材を育成していく方が良いと思います。

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デジタル人材には何が必要なのか

デジタル人材に必要なスキルは、企業変革スキル、業務改革スキル、システム構築スキルです。企業変革スキルとは、企業のビジネスモデルを過去の延長線ではなく、ゼロベースで再構築していくスキルのことであり、起業や新規事業立ち上げの経験が必要となります。業務改革スキルとは、その企業の利益の源泉となる企業内の業務を体系的に整理し、常に課題を明確化して、時代に合わせて対応策を立案し、業務改革を推進することができるスキルのことです。システム構築スキルとは、企業で既に稼働しているシステムを体系的に整理し、最新のITのトレンドを意識して、業務改革と連動しながらシステムを構築していくスキルのことです。

このような人材を外部から採用することができれば良いのですが、そのような人材は極少数です。特に日本においては、欧米に比べて人材の流動性が低いことから考えても、このようなマルチなスキルを持つ人材が育ちにくく、採用しようとしてもとても難しい状況です。ならば、デジタル人材は社内で育成する方が近道です。

最近では、デジタル人材の育成を始める企業も少ないですがでてきました。そういった会社に「業務人材を育てた方が良いか、システム人材を育てた方が良いのか」という質問を受けることがあります。私は「業務人材、システム人材のどちらを選ばれても良いと思います。大切なことは変革意識を持つ人材を選ぶことです」と答えています。業務・システムスキルは真剣に学べば誰でも身につけることはできます。しかし、変革スキルは、関わる社内外の人々を共感させ、動かしていくことが求められます。そのときに必要になるのは、率先垂範で行動していけるリーダーシップと、粘り強く説得するコミュニケーション力です。この二つは業務変革させる上でも、システムを構築する上でも必要となる能力なのです。

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デジタル人材が企業に変革を促す

今後、世の中のデジタル化は益々進み、企業は今までとは次元の違う変化が求められます。その時代の大きな変わり目に立ち向かうのは人間であり、1人の人間の主体的な取り組みが、周りの人を動かし、組織を動かし、大きな変化を起こしていきます。

デジタル変革は、デジタル化により社会や企業を変革させ、人々がより豊かな生活の形を実現することです。その目的を達成するためにデジタル人材の育成に取り組む企業は、将来において大きな発展を遂げることでしょう。なぜならば、業務とシステムの両方の観点から変革を進めることができるデジタル人材を多く持つ企業は、その人材こそが企業の成長の源泉となるからです。

是非、デジタル人材の育成こそがデジタル変革をもたらすのだという意識を持っていただきたいと思います。

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(前回連載はソトコトオンラインのこちらへ)。
 

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鈴木康弘
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員も兼任。

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