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法律相談連載第11回子供が加害者になると、親も監督責任を問われ、損害賠償を求められる可能性が。保険や日ごろの注意で備えを!

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法律相談連載第11回子供が加害者になると、親も監督責任を問われ、損害賠償を求められる可能性が。保険や日ごろの注意で備えを!

  • 2022.02.28

弁護士パパ熊谷考人さんによる家族を守る法律アドバイス。今回は、子供が人やものに危害を加えてしまった場合について。1億円近い賠償金を求められるケースもあるようですが…。

子供が「うっかり(過失)」、または「わざと(故意)」、他人やものに危害を加えてしまうことがあります。そんなとき、子供は、そして親は、どこまで責任を負わなくてはならないのでしょうか。弁護士パパ熊谷さんにうかがいました。
MADURO編集部(以下M) 子供は、時として予期せぬことをしでかしますよね。どこまでが子供の、あるいは親の責任になるのか気になります。

熊谷氏(以下熊谷 敬称略) まず、子供がやってしまったことに対して、親が法律的に全ての責任を負わされるわけではありません。子供自身にどの程度の責任があるか、親にどの程度責任があるかはケースバイケースで、簡単には判断できないんです。ここは大事なところなので、ぜひ覚えておいてください。
 子供が事故や事件を起こすと、被害者側が、「親に責任があるはず」と、親に損害賠償を求めてくることがあります。そういうとき、最初に親が責任を認めてしまうと、「責任を認めましたよね」と賠償金を払わされる方向に話が進んでしまいます。ですから、子供が何か問題を起こした時は、まずは弁護士などに相談をしていただいて、相手とどう向き合うか確認をしてください。

 ただ、トラブルがあったその場で弁護士に相談するのは難しそうです。

熊谷 人として、そしてその後の交渉をこじらせないためにも早期の謝罪は必要ですが、そういう場合も、「責任はすべて親の私にあります」「いくらでも償います」と法的な責任にふれたり、相手に求められて念書をしたためたりしないことです。賠償を求める発言が相手から出たら、「それについては後日ご連絡します」にとどめてください。

 親はどんなときに賠償責任を負うのですか。

熊谷 未成年に賠償させることは実質的に困難ですから、被害者は親に「監督責任」があったとして、親に賠償を求めます。そして民事裁判で監督責任が認定されれば、親が賠償金を払うことになります。2015年に最高裁判決が出た「サッカーボール訴訟」では、11歳の子供の蹴ったボールが高齢者のバイクを転倒させてしまい、親の責任の有無が争点となりました。この件では、地裁・高裁では「ボールが飛び出すような場所でサッカーをしないよう親が教えるべきだった」と親に賠償責任があるとされました。しかし、最高裁で「校庭でサッカーをすることじたいは危険な行為とはいえず、親が監督義務を尽くしていなかったとはいえない」と親の責任は問われないことが決まりました。
 一方、親が高額な賠償を命じられたケースもあります。2008年に11歳の少年が起こした自転車事故では、被害者は意識が戻らず、後遺症も残りました。この事故では、少年が時速20~30キロで走行していたこと、ヘルメットをかぶっていなかったことなどから、親の注意が行き届いていなかったとされました。結果、9500万円の賠償が命じられました。

 過失ではなく、線路に置き石をした場合のように故意にやった場合はどうなりますか。

熊谷 未成年者が置き石のような犯罪行為をした場合、家庭裁判所でどういった処分にするか審判がなされます。一定の重大事件については、刑事裁判になることもあります。そして、故意に違法行為をしたわけですから、親の監督責任(※1)が問われる可能性も高くなります。

 子供というのは何をしでかすかわかりません。親はどう備えておけばいいのでしょうか。

熊谷 どんな子供でも、何かのはずみで人に被害を与えることはあるものです。子供がいるご家庭は、損害賠償請求に備えて保険に加入しておくことをおすすめします。例えば、個人賠償責任保険(※2)は、「お店のものを落として壊してしまった」「野球のバットをふっていたら、人にあたってけがをさせた」「自転車の運転中に人にけがをさせた」といった過失による損害賠償をカバーしてくれます。この個人賠償責任保険は、火災保険や自動車保険の特約でつける人が多いですね。それから、自転車事故に特化した「自転車保険」もあります。こちらは相手への損害賠償のほか、自分のケガのリスクもカバーできるものがあります。なお、いずれもわざとやった場合は補償してもらえないことも知っておきましょう。
 それから、子供が外で元気に遊ぶタイプ、とくにスケボーや球技など危険なことが起こりうる遊びをするようなら、事前にどんな危険があるのか、何をしてはいけないのか、しっかりと注意しておくことも大切です。

 金銭面では保険、そして日ごろのしつけや注意ですね。それなら無理なく対策できそうです!
【注釈】
親の監督責任(※1)
未成年の子供の場合、民事上の責任能力(通常12歳くらいで責任能力があるとされる)がなければ子供が責任を負うことは無く(民法712条)、親が監督義務を怠っていなかったことを証明しない限り、親が責任を負う(民法714条)。

親権(※2)
個人の日常生活や住宅の使用・管理等に起因して第三者の身体や財物に損害を与え、賠償責任を負担した場合の損害を包括的にカバーする賠償責任保険。
中日綜合法律事務所 弁護士
熊谷考人さん

企業案件、相続案件を多く扱う弁護士事務所に所属。プライベートでは4歳の娘さんがいるMADURO世代です。
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