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法律相談連載第4回「ウィズコロナ時代の新しい生活様式でどのような相談が増えましたか?」

法律相談連載第4回「ウィズコロナ時代の新しい生活様式でどのような相談が増えましたか?」

弁護士熊谷考人さんによる法律アドバイス。ウィズコロナで、あらゆる面で新しい生活様式に変わりました。いわゆるニューノーマルな時代。当然、家族の相談や法律事の相談も、これまでとは変わってきました。

いろんなトラブルから家族を守るために、弁護士パパ、熊谷さんに法律的なアドバイスをいただく、この連載。今回のテーマは、ウィズコロナで新しい生活様式に変わって、どんな相談事が新しく増えてきたのか。仕事場、学校、公共施設、イベント事、旅行…あらゆることが変わる中、生活の変化によってどんな法律相談が増えているのか…。


法律相談


MADURO編集部(以下M) コロナによって、あらゆることがチェンジし、新しい生活様式に変わりました。例えば屋外でのソーシャルディスタンス、マスク着用、リモートワークと挙げれば、キリがありません。それによって、立ち行かない業種や会社も出てきました。そんな仕事や家庭の環境変化で、弁護士事務所に持ち込まれる相談内容も変わってきたのでは?


熊谷氏(以下熊谷 敬称略) 一番感じているのが、家族関係の変化です。在宅ワークが増えたり、授業短縮になったり、帰宅時間が早くなったりしたことで、家族で家にいる時間が長くなりました。ソーシャルディスタンスならぬ「ファミリーディスタンス」…家族の距離感が大事に。それによって、良いことも、悪いことも増えました。良いこととしては、家族が話し合う機会が増え、それで相続について相談にいらっしゃる人が増えました。悪いことは、社会に対するストレスのはけ口が家の中に向かうケースが増えました。コロナ前はジムやスポーツで身体を動かしたり、ライブに、飲みに、遊びに行ったりなどストレス発散ができていましたが、そんなストレス発散の場が少なくなりました。家族のDVや虐待の問題が増えているようで、これは今後さらに顕在化してくるかと思います。家庭内で逃げ場をなくして、不倫に走るケースも…。離婚相談も増えているそうです。


M コロナ禍において、そうしたトラブルに対して、弁護士事務所や裁判所ではどのような対応していくのでしょうか?


熊谷 弁護士事務所の対応は変わっていませんが、裁判所は緊急事態宣言の期間中に止まったりしていましたので、対応が滞っていました。その余波がまだ続いてい流ようです。例えば離婚前の婚姻費用(※1)の請求は、生活もありますので「待ったなし」なのですが、示談や裁判で解決しないと請求できないので、時間がかかって、生活がしんどい…という声をよく聞きます。


M お金については、コロナ禍によって、飲食業界や観光・旅行業界など売上が激減してしまって、働いている人の生活にも影響が出ています。税金の支払いができないとか、どうすればいいのでしょうか。


熊谷 税金の納付については、このコロナ禍の状況下ですから、おそらく国も通常よりも猶予(※2)してくれると思います。税金が払えないならば、税務署に相談しましょう。税金に対する絶対的なNG行為は、相談もせずに、督促状などの連絡を無視して、黙っていることです。実はきちんと金銭状況を説明すれば、税金は待ってもらえるんです。もちろん最終的にはきちんと払わなければいけません。それなのに何も説明せずに黙っていては、給与や財産の差し押さえ(※3)をされてしまいます。家賃やローンの返済についても、何とか減額してもらえないか、支払いを待ってもらえないか、どのような交渉をすれば良いのか、という相談が増えました。家賃交渉やローン返済交渉では、相手先が大きい会社であれば余力があることも多く、待ってもらえる可能性が大です。住宅ローンは相手が銀行ですから、待ってもらいやすい。家賃も貸主が大手企業なら同様です。しかし、貸主が中小企業や個人の場合、向こうも経済的に苦しければ、「待てない」と言われる可能性が高くなってきます。。


M 家賃を滞納することで、家を追い出される可能性はありますか?


熊谷 裁判になった場合、一般的には家賃を半年間以上滞納してしまうと強制的に退去を求められても仕方がない…と判断されるケースが多いようです。逆を言えば3ヶ月ほどの滞納では、すぐに退去する必要はないということに。少しでも家賃を払っていけば、大家さん側もそれで我慢する場合も…。しびれを切らした大家さんが裁判所に訴えたとしても、滞納が3、4ヶ月くらいならば、「待ってあげませんか」と裁判所が言ってくれます。やはり個人の自宅というのは、毎日の生活の基盤になるものですから、簡単には退去命令はしません。ですので、すでにあちこちからお金を借りてしまい、取り立てがきつい場合は、弁護士事務所にご相談ください。弁護士から連絡がいけば取り立ては止まりますし、分割での支払いが認められる場合も。最近よくある給与の前借りができる違法な金利の給与ファクタリング問題や、闇金からの借金であれば元金を返す必要もないなど、さまざまなアドバイスがもらえるかと思います。


M 思い詰めたり、無闇に行動を起こす前に、まずは早めに弁護士に相談ですね。


婚姻費用(※1)
結婚期間中にかかる、生活費や教育費などのこと。婚姻費用は、資産や収入に応じて夫婦で分担すると民法760条で定められていて、別居中であっても、離婚が成立するまでは分担しなくてはならない。分担の割合は夫婦間の話し合いで決めるが、話し合いがつかない場合は家庭裁判所に調停を申立てます。


納税の猶予(※2)
納税で、事業の継続や生活が困難となる、あるいは災害で財産を損失したなど、特別な事情がある場合は、税務署に申請することで、最大1年間、納税が猶予される。現在、コロナ禍による特例あり。令和2年2月1日〜令和3年2月1日までに納付期限が来る税金に関しては、令和2年2月以降は1か月以上、事業等の収入が前年同期より約2割以上減少した場合、税務署に申請すれば納期限から1年間の猶予が認められるなど特例もあるので、弁護士や会計士にご相談を。


差し押さえ(※3)
税金や健康保険料などの納付が滞った場合は、財産を強制的に取り押さえられることも。現金や預貯金だけでなく、不動産や給与も差し押さえの対象になります。


中日綜合法律事務所 弁護士
熊谷考人さん
企業案件、相続案件を多く扱う弁護士事務所に所属。プライベートでは4歳の娘さんがいるMADURO世代です。

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