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世界に天才を送り続ける「ユダヤ式教育」とは!?/第22回

世界に天才を送り続ける「ユダヤ式教育」とは!?/第22回

世界に通用する教育を考える「21世紀脳を持つインターナショナルな子供の育て方」連載22回目は、世界のトップを育て続けるユダヤ式教育についてです。

今回は、世界的に見て頭脳明晰な人物を世に輩出しているユダヤ式教育について。なぜ多くの天才たちを今も昔も変わらずに、ずっと生み出せ続けられるのか? その秘密をひも解いていきます。


偉人たちを生み出し続けているユダヤ式教育法


このコラムでは、今まで世界の様々な教育について書かせていただいておりますが、私がずっと興味を持ち続けている教育があります。それがユダヤ式教育です。アインシュタイン、フロイト、マルクス、ジョージ・ソロス(※1)、スティーブン・スピルバーグ、マーク・ザッカーバーグ、これは分野こそ違いますが、ユダヤ人が生んだ天才たちのごく一部です。ノーベル賞受賞者の20%以上が、ユダヤ式の教育を受けていると言われていて、その頭脳明晰さは圧倒的で、他を寄せ付けません。


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アインシュタインはあまりにも有名ですが、ノーベル賞を受賞したユダヤ人は180名もいます。

それでは、なぜユダヤ人はそれほど多くの天才たちを生んでいるのでしょうか? それでは何故ユダヤ人はそれほど多くの天才たちを生んでいるのでしょうか? それはユダヤの歴史を調べることで理解できます。紀元前からたくさんの戦争で国が滅びたり、囚われの身になったり…と苦難の道を歩んできたユダヤ人。紀元70年にローマ軍に破れてユダヤ人は世界に離散し、流浪の民となりました。そのような背景があり、ユダヤ人が最重要視してきたのが「教育」なのです。金や土地は奪われてしまいますが、頭脳や教育は奪うことができないのです。


それでは、ユダヤ式教育とはどのようなものなのでしょうか? ユダヤの教育の基礎は、家庭内教育にあります。ユダヤ教の聖典にはトーラー(※2)タルムード(※3)と呼ばれるものがありますが、その聖典を小さな頃から繰り返し何百回も読み聞かせら、自分自身でも音読して暗記します。膨大な量の本を暗記することで記憶の回路が出来上がるのです。私がオランダに住んでアムステルダムの自由大学に通っていた頃、あるユダヤ人の優秀すぎる学生がいました。オランダ語講座を受けていたのですが、クラス20人の中でもイスラエルから留学していた女の子の記憶力の良さは群を抜いていました。彼女は最終試験で与えられた50分の時間の中で、わずか10分で解答を終えて、席を立ちました。結果は満点。見事1位に輝きました。あまりの鮮やかさに、20年以上たった今でも私の記憶に鮮明に残っています。その頃から、ユダヤ人の教育に興味を持ったのです。


ユダヤ式教育は、暗記だけではありません。ユダヤ人の家庭では、常に質問をすることを習慣付けられているようです。何事もそのまま鵜呑みにせずによく考えて、物事の本質に迫る。いわゆるクリティカル・シンキング(※4)を培っているのです。また質問をするためには、事項をよく理解していなければ、質問は成り立ちません。よい質問することは、学びを極め、思考力を深める訓練になるのです。ユダヤ人の子供は学校でたくさん質問をすることを奨励されています。しっかり先生の言うことを聞いて暗記しなさい、という日本の教育とは真逆です。またハブルータ(※5)という「2人1組で質問と討論を繰り返す勉強法」があります。自分でテキストを分析し、論理的に説明し、パートナーがそれに対して質問し、議論を繰り返して、理解を深めていくというものです。かつてユダヤ人の上司がいましたが、彼は正に質問魔でした。質問に答えるとその答えに質問が飛んできて、またその答えに質問…というのが延々と続きました。とても大変でしたが、今考えるとそれがハブルータ的なもので、自分自身を鍛えるためには良いチャンスでした。我がローラスのインターナショナルスクールにもユダヤ人の保護者の方がいらっしゃいますが、ご家庭でも毎日たくさん質問し、討論を繰り返すのだそうです。


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ユダヤ人の家庭では、ハブルートという1対1対話法で子供に英才教育を授けます。

こうした伝統と習慣が何千年も前から脈々と受け継がれ、色あせることなく、21世紀スキルといわれるクリティカル・シンキング、コミュニケーション力、問題解決力、ライフロングラーニング(生涯学習)、そして何より自分の頭で考える力を身に付け、多くの世界最強の頭脳を輩出してきたのだと思うと、改めてユダヤの教育の凄さを感じます。 


アインシュタインは、こう言っています。
“The important thing is to not stop questioning. Curiosity has its own reason for existing.”
〜大切なのは、疑問を持ち続けることだ。好奇心はそれ自体に意味があるものだ〜。


【注釈】
ジョージソロス(※1)

ハンガリー生まれのユダヤ系アメリカ人大富豪。投資家であり、慈善家。Bank of Englandをつぶした男の異名を取ります。


タルムード(※2)
「研究」の意味。6部構成、63編から成る聖典。ユダヤ教徒の生活、信仰の基となっています。


トーラー(※3)
ユダヤの「聖書」。聖書ヘブライ語 (Biblical Hebrew) で書かれています。


クリティカル・シンキング(※4)
「批判的思考」と訳される思考方法。ただし、物事を批判的に捉えるという意味ではありません。これは、その時点における「最適解」を導き出すために、目の前にある事象や情報を鵜呑みにせず、「それは本当に正しいのか」という疑問を持ち、じっくり考察した上で結論を出すことをいいます。


ハブルータ(※5)
元々は友達、パートナーの意味。1対1の対話的学習で学び合う学習法。 従来の先生が生徒に教え、生徒はそれを暗記する勉強法とは異なります。生徒はそれぞれのハブルータとともに向き合って座り、交代でテキストを読み合い、討論し合います。


インターナショナルスクール


ローラスインターナショナルスクールオブサイエンス 学園長
日置麻実さん

東京、神奈川に8校のSTEMインターナショナルスクール、英語スクールを運営。日本に未来のイノベーターをたくさん輩出することを使命とする。上智大学外国語学部英語学科卒。

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