FASHION
2025.07.13
本物のスカジャンに託した日本の職人技と誇り 伊禮門 悟さんインタビュー
そのスカジャンは一切の妥協がない職人技で作られ、同じく妥協なく仕上げられた桐箱に入っていた。本物を作ることにこだわった高級スカジャンブランド「JacksonSquare Tokyo Shibuya」を立ち上げた伊禮門さんに、その徹底したこだわりが生み出された背景を聞いた。

株式会社BiS
代表取締役 伊禮門 悟(いれいじょう さとる)さん
1994年12月22日生まれ、神奈川県出身。2021年4月、神奈川県綾瀬市に株式会社BiSを設立し、テレビパブリシティに関する代理店業務を開始。スカジャンの「JacksonSquare Tokyo Shibuya」(ジャクソンスクエア)、レザーウォレットなど革小物の「TOUR RECORD」(トゥールレコード)など、数々のブランドをプロデュースしている。著書に「遠回りしても大丈夫。」「夢を追う君たちへ ~夢が人生を創る~」(ともに発行ファストブック)がある。
代表取締役 伊禮門 悟(いれいじょう さとる)さん
1994年12月22日生まれ、神奈川県出身。2021年4月、神奈川県綾瀬市に株式会社BiSを設立し、テレビパブリシティに関する代理店業務を開始。スカジャンの「JacksonSquare Tokyo Shibuya」(ジャクソンスクエア)、レザーウォレットなど革小物の「TOUR RECORD」(トゥールレコード)など、数々のブランドをプロデュースしている。著書に「遠回りしても大丈夫。」「夢を追う君たちへ ~夢が人生を創る~」(ともに発行ファストブック)がある。
01|青春とともにあったスカジャンを再興したい
「その昔、僕がまだヤンチャだった頃。地元の国道134号線をバイクで走っていると、スカジャンを着ている人がいたんです。それが思い出に刻まれていて」。
そう話してくれたのは、スカジャンのブランド「JacksonSquare Tokyo Shibuya」(以下 ジャクソンスクエア)を立ち上げた代表の伊禮門 悟さん。神奈川県で波乱の青春時代を過ごしていた彼が、現在は日本の伝統産業を応援するブランドを次々と展開している。
そんな彼のスカジャンと再会は、ふと立ち寄った横須賀・ドブ板通りにあった。
そんな彼のスカジャンと再会は、ふと立ち寄った横須賀・ドブ板通りにあった。
※ドブ板通り=近くにアメリカ海軍横須賀海軍施設があることから、戦後米兵が日本駐留の記念品として刺繍を入れたジャンパー(スカジャン)を売る店が多く立ち並んだ、全長300mほどの商店街。
「スカジャンの本場だって聞いていたから期待していたんです。でも現地に行ってみたら、ほとんどの店にシャッターが下りていて。ようやく開いている店を見つけても、並んでいるスカジャンには粗悪なものが少なくありませんでした。想像していたより閑散としていたし、『もうこの文化、終わっちゃっているんじゃないか?』と感じてしまったんですよね」。
詳しく調べるうちに、現代で「本物」を作れる職人は、すでにごくわずかしかいないことを知る。

「ある店で(販売用に)『注文したい』とお願いしたんです。でも半年待っても音沙汰なし。結局『忙しくて作れないから無理』と断られてしまったんです。そうやって、今の日本では『良いもの』が作られづらくなっている現実を目の当たりにしました」。
そんな中、ある老舗で出会った一着のスカジャンが、伊禮門さんの感覚を一変させた。
「量産品の隣に、職人が手がけた本物のスカジャンが並んでいて——もう見た瞬間、量産品のものとはまるで別物だと分かった。重みが違う。『これだ』と思いました。その場で店主と意気投合して、『日本の誇りとしてのスカジャン文化』を復活させるブランドを始めることにしたんです」。
02|違いは本物の職人によるこだわりの積み重ね
「ジャクソンスクエアのスカジャンは『ジャンパー』じゃない。まとうことで物語が始まる『作品』です」。
伊禮門さんが手掛けたスカジャンは、一般的なそれっぽいものとは全く異なったオーラを持っている。あえてディテールの違いを見ると、それは刺繍の糸、生地の質感、着たときの馴染み方、着こなしのシルエット。細部の全てに職人の手間と工夫が詰まっていることが、全体のオーラに圧倒的な迫力をもたらしている。
「たとえば刺繍の糸。大量生産のものは、『1巻の糸で1着』みたいな効率重視の作り方。でも本物は違う。何色もの糸を何層にも重ねて、立体感と深みを出す。そうすることで、刺繍が語りかけてくるようなオーラが放たれるんです」。

サテン生地にも見た目だけではない違いがある。軽く羽織った時、大量生産品は刺繍の厚みもごわつきとして伝わってくるが、職人が仕上げた一着には、そういったストレスがない。
「羽織ったときの(肌への)あたり方、動いたときの落ち感、そして肌触りのやわらかさ。刺繍が大きくても着心地は驚くほど軽やかで、ストレスがない。しかもハンガーにかけてもシルエットが崩れない。それは型紙から丁寧に縫製されている証なんですよ」。

刺繍はオリジナルで入れることもあれば、伝統的なモチーフをセミオーダーで入れることもある。そこには、龍、鯉、桜といったモチーフの持つ歴史や意味を感じる。
そうしたこだわりの積み重ねによって、ただ着るだけでは終わらない「まとうことで語れる一着」となっていくのだろう。
そうしたこだわりの積み重ねによって、ただ着るだけでは終わらない「まとうことで語れる一着」となっていくのだろう。
03|スカジャンに宿る敗戦からの「再生の美学」

スカジャンのルーツには、戦後日本の復興が深く関わっている。終戦後、日本に駐留した米兵が自国に持ち帰る土産品として、フライトジャケットに刺繍を入れてもらったことがはじまりだった。
「マイケル、とカタカナで名前を刺繍したりね。それが『かっこいい』って言われていた時代。刺繍という技術で、日本人は食べていくしかなかった。その気概が、スカジャン文化の根っこにはあると思っています。これは敗戦の灰の中から立ち上がる、日本人の知恵と誇りの象徴なんですよ」。
米軍とともに育った横須賀の誇りをどう後世に残すのか。そこに敬意と創意を見出すのが、伊禮門さんのやり方だった。
「横須賀の異国情緒ある街並みも含めて、日本の景色なんです。スカジャンは初めこそアメリカ人向けに作られた土産品だったけど、日本の職人が命懸けで作った日本の文化。これはちゃんと残さないといけないなと、本気で思ったんです」。


04|若者に「本物」を届けたい
ジャクソンスクエアが特にその誇りを届けたいと思っているのは、若者世代だ。
「Z世代と呼ばれる今の若い世代って全部ネットで(買い物が)済んじゃうから、本物に出会う機会がない。だから比較もできない。リアルなものに触れなければ、違いもわからないんです。でも一度でも触れてくれたら、その違いに必ず気づいてくれる。だからこそ届けたいんです。若い世代に、本物を」。
かつては百貨店に様々な本物が並んでいた時代もあった。しかし、今では安価なものが便利に手に入る。その反面、本物に出会うためには、出会える場所から探さなければならない。量産品との違いに気づくためには、「出会う場」が必要だと伊禮門さんは言う。
「若い世代は発信力があるし、感性も鋭い。本気で本物の良さを届ければ、ちゃんと受け取ってくれると思っています」。

実際、同ブランドのスカジャンをまとったモデル 江島柚希さんもこう話してくれた。
(江島)「周りから『なんでそんな本格的なスカジャンを着ているの?』と聞かれるんです。でも一度袖を通してみればればわかります。この刺繍、この着心地は」。
05|育てるのではなく託すものづくり
本物を残すためには、それを作る職人の技術を継承していくことも大切だと考える伊禮門さん。もちろん職人の後継者不足についても考えているようだが、その育成について聞くと、返ってきたのは少し意外な言葉だった。
「職人を『育てる』なんて、そんなの僕らが言う言葉じゃない。おこがましいと思います。彼ら職人が『この人を育てたい』と思えるような環境を、僕らが用意する。それだけです」。
後継者不足に悩む職人の世界で、伊禮門さんが目指すのは「育てる」ではなく「託す」というあり方だった。妥協のない仕事をしてもらうために日々励んでいる伊禮門さんの姿からは、日本の職人が持つ技術と誇りへの信頼を感じられた。
「良い仕事をするには、良い環境が要る。本気の職人が技を磨き続けられるように、僕たちは裏方に徹する。それが、ものづくりの本質だと思っています」。


06|語れる服が人生の深みを彩る
「ただ服を着るんじゃない。『なぜこれを選んだか』を語れる服こそが、人生の深みを作る。そんな一着を、手元に置いて欲しいんです」。
スカジャンとは、日本文化であり、職人の技術であり、そして日本人の誇りだ。
時代がどれだけ変わっても、本物の重みをまとうとき、会話が生まれ、コミュニティが育ち、文化が続いていくのではないか。本物のスカジャンであれば、歴史と託された想いを背に乗せて、次の世代にまで受け継いでいくことができる。
そして本物には、語るべき誇りが宿る。まとうことで、自分自身の「物語」が始まっていく。
時代がどれだけ変わっても、本物の重みをまとうとき、会話が生まれ、コミュニティが育ち、文化が続いていくのではないか。本物のスカジャンであれば、歴史と託された想いを背に乗せて、次の世代にまで受け継いでいくことができる。
そして本物には、語るべき誇りが宿る。まとうことで、自分自身の「物語」が始まっていく。

モデル 江島柚希さん(左)
JacksonSquake公式モデル。湘南ベルマーレフットサルクラブ 公式アンバサダー、湘南ゴールドエナジー 公式アンバサダー、YouTubeチャンネル「マックス探検隊」MC、クロスFMラジオ出演など。
モデル Rinta Iwasakiさん(右)
JacksonSquare公式モデル。湘南ベルマーレフットサルクラブ 公式アンバサダー、、湘南ゴールドエナジー 公式アンバサダー、神奈川県綾瀬市PR映像出演、Popteen Web雑誌掲載など。
JacksonSquake公式モデル。湘南ベルマーレフットサルクラブ 公式アンバサダー、湘南ゴールドエナジー 公式アンバサダー、YouTubeチャンネル「マックス探検隊」MC、クロスFMラジオ出演など。
モデル Rinta Iwasakiさん(右)
JacksonSquare公式モデル。湘南ベルマーレフットサルクラブ 公式アンバサダー、、湘南ゴールドエナジー 公式アンバサダー、神奈川県綾瀬市PR映像出演、Popteen Web雑誌掲載など。


JacksonSquare Tokyo Shibuya(ジャクソンスクエア トウキョウ シブヤ)
所在地/東京都新宿区西新宿6-12-4 コイトビル8階
営業時間/10:00~19:00(※来店は予約制)
定 休 日/不定休
TEL/03-6626-9695(※来店は予約が必要)
JacksonSquare Tokyo Shibuya公式サイト http://jacksonsquare.bis-inc.co.jp/
所在地/東京都新宿区西新宿6-12-4 コイトビル8階
営業時間/10:00~19:00(※来店は予約制)
定 休 日/不定休
TEL/03-6626-9695(※来店は予約が必要)
JacksonSquare Tokyo Shibuya公式サイト http://jacksonsquare.bis-inc.co.jp/
取材・文/大竹菜々子 撮影/垣野雅史