ライフタイムバリューを上げる未来投資第3回「世界に向けての未来投資はコミュニケーションが軸」
倉田 前回はセンチュリオンの社員全員を不動産業界におけるコンシェルジュとして育て、投資をされるお客さまの幸せを一緒に模索していくための具体的な施策をお伺いしました。このコンシェルジュサービスは、日本国内向けのものなのでしょうか?
西川 いいえ。弊社の不動産取り扱いは現状では海外のお客さまが1割程度ですが、年々その比率は上がってきています。不動産業界もグローバル化が進んでおり、欧米やアジアの方に対して日本の魅力をもっと伝えていきたいと思っています。香港やニューヨークに比べれば、まだまだ日本の不動産の価格は割安ですし、潜在的な魅力を掘り起こして海外にアピールしていきます。
倉田 私の会社でも中国向けの媒体、日本品質(※1)を手掛けておりますが、特に中国の富裕層は日本の不動産に高い関心を持っています。ただ、銀座や浅草、京都、大阪など有名観光エリアはご存知ですが、それ以外の街の魅力や価値についてはほとんど知らないのが実情です。
西川 確かに観光地以外のエリアに詳しい外国人は少ないですが、コロナ前は観光地以外の地方を訪れる外国人も徐々に増えているようです。不動産も多様化な時代になり、深い情報を求めていることを実感します。利回りなど定量的な数値はもちろんのこと、その土地の周辺にどのような飲食店があって、そのエリアならではのお祭りなど、四季折々の魅力までを数値的な不動産情報と一緒にお伝えできるように我々がマインドシフトすべきだと思っています。そのため弊社ではその街の魅力を映像化して、その土地のことをエモーショナルに感じてもらうことにも尽力しています。
倉田 なるほど。政府が推進しているクールジャパン(※2)の取り組みと近いものがありますね。
西川 そうですね。新たな日本の魅力を発信して、わざわざ日本で不動産を購入するということの価値付けと魅力をきちんと提供することを意識しています。不動産価格や利回りという表面的なことだけでなく、日本の本当の良さや伝統や文化と一緒に、その土地にある魅力をコンテンツにしてお伝えすることで、お客さまの満足度がアップし、そうすることで日本の素晴らしさが世界中に広まっていきます。不動産を通してお客さまの心とライフスタイルを豊かにする…それがライフタイムバリュー(※3)を高めていくお手伝いになると思っています。
倉田 価値観や人生観まで含めたお付き合いということですね。ただ、今回の新型コロナの影響で世の中の生活様式がこれまでとガラリと変わりました。人同士がエモーショナルにつながるコミュニケーションについては、どのようにお考えでしょうか?
西川 コロナの自粛を経て、人とのつながりの価値を誰もが再認識しました。不動産においても地域の住民との関わり合いや触れ合いという新たな軸が求められると思います。地域のコミュニティと一丸となってそのエリアを育てていき、コミュニケーションを深めていくことが大切です。地域とのコミュニケーションをどれだけ深く取れるかということも、今後の不動産価値の重要な指標になると考えています。
倉田 とはいえ、アセットフォルダー(※4)にとって海外の方に物件を売るというのは、二の足を踏む方もまだ多いと思うのですが…。
西川 外国人は日本の土地を無闇に買い漁っていく…というようなイメージを持たれている人も多くいます。我々は不動産だけでなく地域とのコミュニケーションを深めたいと考えているお客さまをしっかり選別して、ご紹介するようにしています。単なる利回りだけの投資物件として考えている人ではなく、我々が介在することで、売主さまにもこの人になら売ってもいいと納得してもらえることが重要なんです。
倉田 センチュリオンを介することで、売主と買主がつながってくるというわけですね。
西川 はい。お客さまに対しても、物件についても我々がどちらも両方しっかりと担保しコミットメントすることで、不動産から広がるコミュニケーションが生まれるという、世界初の不動産業態を目指しています。双方のライフタイムバリューが上がるというお手伝いを、我々がコンシェルジュとしてご案内させていただければと思っています。
倉田 ウィズコロナの時代において人の幸せを考えたときに、西川さんは人と人のコミュニケーションの重要性を企業理念を通して考えられているのですね!
西川 日々、社内報やSNSを通じて私の考え方や目指していることを発信していると前回お話ししました。電通の鬼十則は撤廃されましたが、実はこの中に「引きずられるな、引きずりまわせ」という言葉があります。何事においても、しっかりナビゲートして道を作っていかなければいけないということです。新たな道をナビゲートして、業界初の新たな価値観を持った不動産サービスを、あらゆるステークホルダー(※5)に広めていき、ライフタイムバリューを向上していただきたいと考えています。
倉田 次回は西川さんと実際に物件の話をしていきましょう。
センチュリオン代表取締役社長
西川将史
2008年に不動産売買やコンサルティング、ファイナンスアレンジをメイン事業として創業されたセンチュリオン(https://www.cent.co.jp)。特に優良物件情報と資金調達コンサルをセットで提供する資産運用は、高い実績を誇ります。資産運用希望者との対面面談を元にした、資産運用コンサルティングも行っています。
インターホールディングス代表取締役社長
倉田 学
大手広告代理店を経て独立。事業創出、経営、マーケティング戦略等のコンサルティングを経て、2019年インターホールディングスを創業。世に埋もれたアイデアや特許を預かり、新ビジネスモデルを創生と運営をしています。最近では中国最大の決済会社Lakalaの日本法人Lakala Japan(https://www.lakala-japan.com)と提携した在中の中国人向け日本情報サイト「日本品質」(http://thejapanquality.jp)を6月にローンチ。
【注釈】
日本品質(※1)
スマホ時代に約2億人の中国人が年間100兆円前後のQRコード決済をする、中国最大の決済サービス代行業LAKALA(ラカラ)。その日本法人、ラカラジャパンが保有する在中の中国人に向けた日本情報サービスが「日本品質 -THE JAPAN QUALITY-」。日本のライフスタイルを中心とした情報(モノ、コト、トコロ)を発信するキュレーションメディアです。
「日本品質 -THE JAPAN QUALITY-」のコンテンツは、We Chat Pay内でラカラチャイナに登録する4000万人の中国人に週1回プッシュ通知されます。ファッション、クルマ、時計、ジュエリー、ガジェット、ビューティー、グルメ、トラベル、健康、マネーなどに分けて日本の情報、日本の良さを伝えていきます。MADURO ONLINEやソトコトonlineのコンテンツも中国語に翻訳されて「日本品質 -THE JAPAN QUALITY-」に展開されています。www.thejapanquality.net
クールジャパン(※2)
2010年に経済産業省にクールジャパン室が開設され、情報発信や海外展開、インバウンド振興によって日本の経済成長を推進。日本独自のコンテンツを海外に広め、海外のファンを増やし、ジャパンカルチャーを世界的にブランディングすることを目的としています。現在は海外から熱狂的なファンが多いアニメ、マンガ、ゲーム等のコンテンツはもちろん、原宿から派生したTOKYO Kawaiiに代表されるファッション、食、伝統文化、デザイン、ロボットや環境技術など世界からクール(かっこいい)と捉えられる日本の魅力の総称してクールジャパンと呼んでいます。
ライフタイムバリュー(※3)
マーケティング用語で言うと「顧客生涯価値」 。LTVと略されます。デジタル社会において、データベースの活用はマーケティング分野において必要不可欠とされる昨今で、個人あるいは企業(顧客)が特定の取引先と取り引き開始から終了までの期間(顧客ライフサイクル)内の利益を算出するための概念。ダイレクトマーケティングにおいて、顧客ロイヤリティを高めるための大事な指標になっています。でも、センチュリオン西川社長はライフタイムバリューを単なる数値化するためのマーケティング用語としてだけの指標とは考えません。数値だけの目標では図れない、個人のライフスタイルや企業の目指すべき方向に合わせた達成度こそ、本当に価値の高い満足のいくライフスタイルバリューと考えます。つまり、センチュリオンの西川社長が提唱するライフタイムバリューとは、不動産資産をただ単純にお金の利益をもたらすためだけと考えておりません。不動産を購入する人のライフスタイルに合った価値も一緒に提案し、さらにその土地やその地域への持続的な貢献を含めてライフタイムバリューを考えます。まさにESG、SDGsの観点と、個人の人生の満足度をミックスさせた、次代のライブタイムバリューを提案していきます。
アセットホルダー(※4)
アセットの意は、経済的価値のある資産や財産のこと。主に金融、不動産業界で使われる言葉で、現金、預貯金、株式や債券などの金融資産、不動産などの換金性の高い資産を指します。つまり、アセットホルダーとは上記のアセットを保有する者、いわゆる資産保有者のことを指します。また、アセットマネジメントという言葉も合わせて使われることが多いですが、これはアセット(現金や有価証券、不動産など)の資産管理や運用を請け負う業務のことを指します。
ステークホルダー(※5)
企業が経済活動…つまり事業、経営を行うことで影響を受ける利害関係者をステークホルダーと言います。具体的には株主、経営者、従業員、顧客、取引先から取引先の金融機関や地域社会や行政機関までステークホルダーとなります。こうしたステークホルダーの中でも、株主のことを特別にストックホルダーあるいはシェアホルダーと呼びます。単に株を保有しているだけならストックホルダーであり、議決権を有する大株主ならシェアホルダーです。ステークホルダー企業とはステークホルダー全体の利益バランスを考えている企業を指し、シェアホルダー企業とは株主の利益を優先で考える企業を指します。昨今、「すべてのステークホルダーに信頼される企業」とか「すべてのステークホルダーの幸せのために」といった理念を掲げる大手企業が多くなりました。つまり、ステークホルダーとの関係を強化することが持続的な成長や利益につながると考える企業が多いのです。