グローバルリーダーを育成する、海外のボーディングスクールについて/第21回
今回は、海外のボーディングスクールついて。ボーディングスクールとは、全寮制の寄宿学校。勉強だけでなく、リーダー学から礼儀、規則など行儀作法まで学ぶ、いわゆる帝王学を学ぶための学校です。日本がなぜ経済的にここまで落ち込んでしまったのか…それを日本の学校教育の観点も交えて、海外のボーディングスクールをひも解いていきます。
リーダー育成を忘れた偏差値至上主義的な日本の教育と、
リーダー学、帝王学を大事にする欧米の教育との差は?
前に連載第19回目で、様々なデータからわかる日本経済の凋落について、その凋落の原因が教育にあることをお話しさせていただきました。今回は日本の教育の中でも、特に足りない「エリート教育」についてお話をしたいと思います。一般的に日本ではエリートというと真っ先に思い浮かぶのは、しのぎを削って猛勉強して、偏差値の高い有名大学に入学し、そして官僚や大会社の重役になる人たちのことかもしれません。しかし、それは本当の意味でのエリートではないのです。
勉学に秀いでているのはもちろんですが、人格的にも優れ、Noblesse obliege(※1)のマインドを持って、世のため、人のために貢献できる人こそが、エリートと呼ばれます。エリート教育とは帝王学、すなわちリーダーを育成するための教育で、決して偏差値が高い秀才を輩出するための言葉ではないのです。現代の日本に、自分の利益を度外視して、国を引っ張っていけるような真のリーダーを育成する教育機関があるでしょうか? 残念ながら、ありません。どんなに国が傾いても、年功序列のようなシステムで、志のない小細工だけが得意の政治家が順番に首相や閣僚となり、何も改革できないどころか、自分たちの引き起こした不祥事の対応に追われ、時間ばかりが失われていくのです。偶然良いリーダーが出てきたらラッキーという大変心もとない状況です。
イギリスやアメリカには、中学、高校教育機関のボーディングスクール(※2)があり、名門と呼ばれているボーディングスクールが、エリート育成…つまりリーダー育成の機関となっています。イギリスではパブリックスクールと呼ばれており、最も知名度が高いのが、14世紀にヘンリー6世が開いたイートン校。卒業生の中には、経済学者のケインズ、イギリス王室のウィリアム王子、ヘンリー王子や元首相のデヴィット・キャメロン、ボリス・ジョンソンなど歴代のイギリスの首相が20人もいます。その他にも、ラグビー校、ハロウ校、ウィンチェスター校などを含む、The Nine(※3)と呼ばれているのが、英国の名門パブリックスクールです。
アメリカでは、フィリップスアカデミーに代表される10校の名門ボーディングスクール…いわゆるTen Schools(※4)が有名です。ボーディングスクールで子供たちは、都会から離れた豊かな自然環境の郊外の寮で寝食を共にし、個性を重んじた少人数体制で勉学、スポーツから音楽や美術などの芸術まで学問に励み、24時間体制でリーダーになるための全人教育を受けています。そして勉強はもちろんのこと、リーダーに必要な礼儀や作法、コミュニケーション力を習得し、共感力、忍耐力、ボランティア精神等を身に着け、世界に通用する真のグローバルリーダーとして羽ばたいていくのです。そのリーダーの層の厚さが、その国の国力を強力にしていきます。
ボーディングスクールにかかる教育費は、寮費を入れて1年間で最低でも500万〜600万円以上かかりますが、その教育の質の高さから、世界中の生徒たちが押し寄せています。また近年では名門ボーディングスクールが、マレーシア、香港、タイなどアジアの国々に展開しています。
ローラスでは、この冬からEtonX(イートン校のウェブ版)という高校生向けのオンラインスクールを提供します。起業家教育、パブリック・スピーチ、クリティカル・シンキング、クリエイティブ・ライティングなど様々なレッスンを通して、イートン校が長年培ってきたリーダー育成の教育を、日本の高校生が受けられる大変貴重な機会となります。2023年、ローラスは中等部、高等部を開校する予定ですが、海外の名門ボーディングスクールに引けを取らない、真の意味で海外に通用するエリート、日本をそして世界をけん引するグローバルリーダーを育成する教育を準備中です。
【注釈】
Noblesse obliege(※1)
ノブレス・オブリージュ。社会的地位、財産、権力のある人、身分の高い人こそが果たさねばならぬ社会的責任と義務。
ボーディングスクール(※2)
イギリスを起源とする全寮制学校。スイス、アメリカ、ヨーロッパ、アジアに名門校が存在します。家族と離れ、寮生活において学業のみならず心身共に修養し、規則、礼儀、自立心、コミュニケーション能力を養成します。
The Nine(※3)
ザ・ナイン。イギリスを代表するパブリックスクール9校を指します。設立年度が古い順にウィンチェスター、イートン、セント・ポールズ、シュルズベリー、ウェストミンスター、マーチャント・テイラーズ、ラグビー、ハロウ、チャーターハウス。
Ten Schools(※4)
テンスクールズ。アメリカのボーディングスクール の中で、もっとも歴史と伝統があり、学術的にも権威のあるトップクラスの10校。フィリップス・アカデミー、フィリップス・エクセター・アカデミー、ディアフィールド・アカデミー、ザ・ローレンスビル・スクール、ザ・ヒル・スクール、セント・ポールズ・スクール、ザ・ルーミス・チャフィー・スクール、チョート・ローズマリー・ホール、ザ・タフト・スクール、ザ・ホチキス・スクールがそれにあたります。
ローラスインターナショナルスクールオブサイエンス 学園長
日置麻実さん
東京、神奈川に8校のSTEMインターナショナルスクール、英語スクールを運営。日本に未来のイノベーターをたくさん輩出することを使命とする。上智大学外国語学部英語学科卒。