CULTURE
2025.11.18
映像で生きる。理学療法士から映像クリエイターへ 加藤大地さんの挑戦
理学療法士から映像クリエイターへ。遠回りでも、無駄に思えても、好きな道で努力を重ねて夢を実現していく若者のドキュメンタリー。
加藤大地さん
1999年5月10日生まれ、福岡県北九州市出身。地元福岡県の大学を卒業後、大阪の病院で理学療法士として1年間勤務。映像編集を勉強しながら病院に在籍していたが、2023年5月から株式会社BiSに所属。映像クリエイターとしてのキャリアをスタートさせる。
1999年5月10日生まれ、福岡県北九州市出身。地元福岡県の大学を卒業後、大阪の病院で理学療法士として1年間勤務。映像編集を勉強しながら病院に在籍していたが、2023年5月から株式会社BiSに所属。映像クリエイターとしてのキャリアをスタートさせる。
加藤大地「一流のアーティストと関わることができる映像制作の世界に早く行きたい。だからクライアントから求められるものをたくさん形にして、どんどん腕を上げていきたい」。
そう話してくれたのは、テレビや映画の企画制作を行っている、株式会社BiSの映像クリエイター、加藤大地さん。現在は映像制作の現場で撮影から編集、音声、まで幅広く担い、テレビ番組やプロモーションビデオの制作を手がけている。
そんな彼のキャリアスタートは、まったく別の世界――理学療法士だった。
そんな彼のキャリアスタートは、まったく別の世界――理学療法士だった。
1|違和感から始まったキャリアの再出発
加藤大地「そもそも理学療法士になったのは、親にその学校を勧められたことがきっかけでした。将来何をしたいのかが分からなくて、大学で資格を取ってから仕事をしようと思って」。
しかし、卒業後病院勤務に就いたものの、わずか1年で退職してしまう。理由は仕事そのものへの違和感だった。人の身体を支える仕事は尊いと理解していたものの、自分の内側に芽生えた小さな声が「自分は別の場所にいるべき」と告げていた。
加藤大地「理学療法士としての現場で働きながら“自分じゃないな”という感覚がずっとあったんです。最初は(親への)責任は果たしたかったので、資格を取って就職してみたけど、何かが違う。そう思った瞬間からはもう次のことを探しはじめました」。
当時、ふと学生時代の記憶が蘇ったという。アルバイト先のジムで、仲間たちの卒業ムービーを作ったときのこと。カメラ越しの笑顔、音楽に合わせて流れる映像。
そこから毎夜パソコンを開き、独学で動画編集を学びはじめた加藤さん。編集ソフトを扱いながら、“楽しい”という感情があふれ出てきた。
そこから毎夜パソコンを開き、独学で動画編集を学びはじめた加藤さん。編集ソフトを扱いながら、“楽しい”という感情があふれ出てきた。
加藤大地「映像を作ることはこんなに夢中になれるんだ、って。社会人になってから忘れていた感覚でした」。
2|BiS 伊禮門さんとの出会いから始まった、プロの道
志すべき道の方向転換は早かった。理学療法士として働きながら、映像編集のスキルを磨き、多くの人と出会うことになる。
しかし、現実はそう甘くない。仕事としての映像は、趣味の延長では通用しない。「仕事をもらうには、どうすればいいのか?」と思い悩んでいた。そんな時期、偶然が重なりBiSの代表・伊禮門 悟(いれいじょう さとる)さんと出会うこととなる。
しかし、現実はそう甘くない。仕事としての映像は、趣味の延長では通用しない。「仕事をもらうには、どうすればいいのか?」と思い悩んでいた。そんな時期、偶然が重なりBiSの代表・伊禮門 悟(いれいじょう さとる)さんと出会うこととなる。
加藤大地「最初の印象は、本当に“厳しそう”でした(笑)。でも、初対面から本気で向き合ってくれた。ビジネスとして、クリエイターとして、どうあるべきかを突きつけられた感覚でした」。
伊禮門さんから「映像を作るならカメラも使えるべきじゃない?」というの言葉を受け、すぐにプロ用のスチールカメラを買いに走り、アーティストの宣材写真を撮ることになるという劇的な展開。
同時に加藤さんはカメラの基礎から学ぶため、図書館で撮り方の勉強をするという毎日が始まった。
同時に加藤さんはカメラの基礎から学ぶため、図書館で撮り方の勉強をするという毎日が始まった。
3|激務の中で教わったこと
当時のことを、伊禮門さんも振り返る。加藤さんに檄(げき)をとばしていたことについて、
伊禮門 悟「彼は最初から礼儀や納期の部分で苦労していた。深夜2時まで編集作業に夢中になって寝坊してしまったり、時間に追われていたりね。でも、怒るのはその分期待しているからです。才能は最初から感じていました」。
連日の激務は、代表である伊禮門さん自らの運転で迎えに行っても、まだ寝坊してしまうほどの疲労困憊。そんな毎日を過ごしながら、現場に向かうクルマの中で伊禮門さんは加藤さんに必要なことを淡々と伝えていく。厳しい言葉の裏に信頼があった。
「本気でぶつかってくれる人がいる」という事実が、加藤さんを突き動かしていた。
「本気でぶつかってくれる人がいる」という事実が、加藤さんを突き動かしていた。
加藤大地「嫌になることもありました。でも仕事は楽しかった。やればやるほど手応えがあったし、何より成長を実感できたんです」。
4|無理を超え、期待を超える。――1人で手がけたテレビ番組
経験を重ねた加藤さんがいよいよ臨んだのは、伊禮門さんがプロデュースをするテレビ神奈川『ふるさとの台所』(2025年10月放送開始、11月29日、12月27日放送予定)の番組制作だった。その仕事は「無理を投げた案件」だったという。
撮影、音声、照明、編集――全工程を加藤さんが担う、無謀ともいえる挑戦。伊禮門さんも、最初は「無理だろう」と思っていた。だが、加藤さんは逃げなかった。
撮影、音声、照明、編集――全工程を加藤さんが担う、無謀ともいえる挑戦。伊禮門さんも、最初は「無理だろう」と思っていた。だが、加藤さんは逃げなかった。
伊禮門 悟「実はグループ会社にも最初から“最悪の場合、助けてください”と伝えていたくらい。でも、どうにか形にしてくれた。与えれば必ず自分で考えてこなしてくれる。それが加藤くんです」。
伊禮門 悟「損失を被ってでも経験させたいと思っていた。そして、結果的に彼は乗り越えることができた。そういう時、人は伸びるんです」。
加藤さんにとっても、それは“無理を超える”経験だった。「やってみたら意外とできた」という成功体験は、確かな自信になったようだ。
加藤大地「放送やTVerで配信されている番組を見たときは、やっぱり恥ずかしかったですね。少しでも早く、もっと良いものを仕上げられるようになりたいと思いました」。
5|“作業”ではなく“作品”をつくるクリエイターに
実際、プロの映像制作現場には数多くのカメラマン、ディレクターが存在する。しかし、伊禮門さんは言う。
伊禮門 悟「作業として映像に携わる人と、作品を作っている人は違う。加藤くんは後者で、いつも作品作りを探求している。考えながら作っているのといないのとでは、身につく力も間違いなく変わってくる」。
TOUR RECORD 「旅が記憶になる。」
加藤大地さんの映像作品は、BiSが手掛ける自社ブランドの推進力にもなっている。
via www.youtube.com
加藤さん自身も、撮影現場で感じていることがある。
加藤大地「カメラマンとして10年やってきたという人の撮り方を見ても、“それでいいの?”と思ってしまうことがあります。心遣いや気遣いのレベルで、自分はもっと上に行けると感じるんです」。
その言葉には、どこか静かな闘志が宿る。
加藤大地「映像が好きだから、悩みがあっても続けられる。忙しいほど夢中になれる。今は撮影も編集も、全部楽しいです」。
6|加藤大地というブランドへ
伊禮門さんは、加藤さんへの期待を込めた思いにあふれている。
伊禮門 悟「彼の世界観はまだ発展途上。でも、有名な作家さんのような空気感を出したいと思ったとき、それを作れる腕を持っていればいい。加藤大地に頼めば“加藤大地の世界観”になる――そういう状態を目指してほしい。彼は無駄を恐れず、どんな仕事も自分の糧にしていくタイプ。そういう人間は最後にアーティストになる」。
今はまだ、自分の色を探している途中。だが、その“模索”こそが加藤さんの現在地だ。
加藤大地「自分が何を作りたいのか、まだはっきりとは分かっていません。今は求められたことをしっかり実現して喜んでもらいたい。いろいろ経験を重ねて、自分の世界観が生まれてくることを、(自分自身で)待ちたいと思っています」。
遠回りもすべて自分の力に
遠回りでも、無駄に見える仕事でも、積み重ねていけば必ず血肉になる。理学療法士から映像クリエイターへ。
加藤大地「周りと比べて焦ることはないですね。むしろ、みんながゆっくりしてくれていたら自分は差をつけられるのになと思う」。
まっすぐな一本道ではなかったからこそ、彼の映像にはリアルが宿る。
そして加藤さんは今日もカメラを構え、光を追いかけている。レンズの向こうに、自分の未来を見つめながら。
そして加藤さんは今日もカメラを構え、光を追いかけている。レンズの向こうに、自分の未来を見つめながら。
株式会社BiS(ビス)
所在地/東京都新宿区西新宿6-12-4 コイトビル8階
営業時間/10:00~19:00
定 休 日/不定休
TEL/03-6626-9695
メール/info@bis-inc.co.jp
https://bis-inc.co.jp
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取材・文/大竹菜々子 撮影/鈴乃





















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