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第14回/パンデミックとデジタルラーニング「パンデミックで見えた海外と日本の教育格差」

第14回/パンデミックとデジタルラーニング「パンデミックで見えた海外と日本の教育格差」

ローラスインターナショナルスクールオブサイエンスの日置麻実さんに伺うイノベーティブな教育についての連載。今回はコロナ禍での自宅教育について。

コロナウイルスの世界的な蔓延、パンデミックにより私たちはいまだかつてない状況に陥ってます。世界中の大都市が次々とロックダウンされ、街はさながらゴーストタウンのような雰囲気に。人類は歴史的に何度もパンデミックを経験してきましたが、その都度パンデミックにより社会が大きく変貌を遂げてきています。


例えば14世紀にヨーロッパを中心に流行ったペスト。死体が黒くなることから黒死病とも言われますが、この疫病により、ヨーロッパ3分の1の人が死亡しました。それまで人々の生活の中心、心の拠り所だった教会は人々の命を救えず、その権威は地に落ちてしまったのです。このペストにより、人口の激減などの要因とも相まって、中世の社会は終焉を迎えることに。3年も続いたペストの流行の間に人々は家に静かに閉じこもり、深く物事を考えるようになり、ルネサンス文芸復興に繋がっていったと言われています。


さて今回のパンデミックで世界はどう変わっていくのでしょうか? もっとも身近に感じるのは、これによってデジタルシフトが否応なく物凄い勢いで進むようになったことでしょう。多くの会社ではテレワークを導入し、zoomやGoogle Meetなどでミーティングしています。私はオンラインでのミーティングがかなり苦手だったのですが、もう背に腹は変えられません。毎日zoomやGoogle Meetで会議をしています。学校も同様です。コロナの影響で全世界には15億人もの子供が学校に通えない状況はまさに戦時中と同じ状況ですが、ICT教育(※1)が進んでいるアメリカ、カナダ、中国などは休校と同時にオンライン学習を始めています。日本の小中学校では公立、私立を問わず休校中はオンラインでの授業をやっておらず、配られた教科書を自主(親と)学習しているようです。


インターナショナルスクール


Laurusでは幼稚園の年長さんからICTプログラミングの授業があるので、タイピングをマスターすることから始まり、初等部1年生からGoogleのOffice機能を使えるように成長していきます。またその他デジタルアプリでの授業もしておりiPadも問題なくスムーズに使えますので、学校自体がデジタル化していますので、そのままオンライン授業に移行できました。初等部はすでに3月からオンラインで授業していますが、その様子はちょっと近未来的で面白いです。朝9時にGoogleクラスルーム(※2)でまず先生からのメッセージと課題がビデオで配信されます。新年度から休校になってしまっているので、''Hi,Class.   Good morning.  I’m John.  Your Homeroom teacher.  How are you? ‘ と先生がビデオで自己紹介。それを見て、生徒それぞれが思い思いの自分のメッセージを動画に撮って、アップロードして自己紹介することから新学期のオンライン授業は始まりました。


また算数の授業では先生のビデオ授業のときもあれば「カーンアカデミー(※3)の算数の動画を見て、このワークシートをやって」と言う課題を出したりしています。毎日のホームルームの時間はグループごとにライブで先生と生徒がチャット。これが生徒にとって先生やクラスメイトとのつながりを実感できるソーシャルな時間になっています。


これからはScienceやSTEM (※4)、PE(体育)やMusicの授業もオンラインで授業を配信していきます。Scienceの時間は家でできる実験、例えば「牛乳からプラスチックを作ろう」などやSTEMもプロジェクトの課題も出す予定です。この先コロナが落ち着く時期については悲観的な見方が多く、ひょっとしたら1年かかってしまうかもしれないし、一度で終わらないかもしれません。そういう意味で生徒たちの授業料がオンラインに素早く移行できたことは、生徒の学習機会を無駄にすることがなく、ほっとしています。これから更なるデジタル化、オンライン化が進んでいきますが、このデジタルデバイド(※5)が個人、企業、教育そして国家の命運を分けるのだと思います。


ICT教育(※1)
「Information and Communication Technology」の略称で、「情報伝達技術」の意味。デジタルIT社会に対応するために、情報・知識の共有に焦点を当てて「人と人」「人とモノ」の情報伝達といった「コミュニケーション力」を養う教育。



Googleクラスルーム(※2)
Googleが提供しているソフト。web上でできるクラスの運営、管理のデジタルツール。



カーンアカデミー(※3)
サルマン・カーンにより設立された教育系非営利団体。算数、科学、歴史、美術、経済等など様々な科目をYouTubeで配信し、世界中の誰でも多言語化された運営サイトにて練習問題を無料で学べる。www.khanacademy.org



STEM (※4)
cience、Technology、Engineering、Mathematicsの頭文字を取って、科学・技術・工学・数学の教育分野を総合的学ぶ教育。デジタル社会、AI社会に対応した、プログラミングやITに触れて「自ら考える力」を養う新しい教育法。


デジタルデバイド(※5)
ITを使いこなせるかどうかで生じる貧富、機会、社会的地位など個人、地域、国家間に生じる情報格差のこと。




インターナショナルスクール


日置麻実さん
ローラスインターナショナルスクールオブサイエンス 学園長
東京、神奈川に8校のSTEMインターナショナルスクール、英語スクールを運営。日本に未来のイノベーターをたくさん輩出することを使命とする。上智大学外国語学部英語学科卒。

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