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MADURO STYLEの家創り第26回「趣味や特技を生かした空間で地元と笑顔で交わる家/後半」

MADURO STYLEの家創り第26回「趣味や特技を生かした空間で地元と笑顔で交わる家/後半」

納得住宅工房が建てた家の魅力に迫るご自宅探訪企画。今回連載26回目は、前回に引き続き、奥さまの特技と夢を生かして自宅にプライベートヘアサロンを併設している静岡県浜松市にある木原さん邸の家創り取材の後半編です。

ご自宅にあるプライベートのヘアサロンで地元の友達や親戚、家族とご近所コミュニケーションしている…そんな地域活性化の小さな原点のような、このお家がどのようなブラッシュアップを経て完成したのか?…設計を担当した納得住宅工房の久保社長に当時のやり取りを述懐いただきつつ、お話を聞いてきました。昭和の時代、ご近所の知り合いのお家は駄菓子屋さんだったり、八百屋さん、編み物教室、ピアノ、そろばん、習字教室だったり…そんな地域に密着した商売や特技を生かした地域密着型のお家が多かった昭和の時代のご近所コミュニティを、人の触れ合い方が変わるデジタルシフトの現代にどう置き換えて家創りをしているのか?…地域活性化でSDGsな家創りの極意を、建築家の目線で紐解きます。


大久保 今回は静岡県浜松市の木原さん邸の地域密着型、地方活性化の家創りついて、久保社長にお話しをお伺いしたいと思います。この木原さん邸は、ご自身の趣味や特技を生かして近所の知り合いや親戚とコミュニケができる空間…玄関横に奥さまのヘアサロンルーム、離れに旦那さまのトレーニングルームをご自宅に併設していました。


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久保 この木原さん邸は4年前にお引き渡しした作品で、私が設計させていただきました。 今でも昨日のように鮮明に覚えている特徴的な創りで私の力作の1つです。奥さまのご両親が持っていた150坪の土地に、広い平屋を設計しました。足を運ばれた感想はいかがでしたか?


大久保 白を基調に木をふんだんに使った茶色のナチュラルな2トーンが周囲の地域と馴染んだ、とても優しくて温かい雰囲気の家でした。いつもの納得住宅工房さんのクールでモダンでシャープなテイストとは違って見えたのですが、このテイストは木原さんのリクエストだったのでしょうか?


久保 そうです。近年の納得住宅工房といえば、「グラン・ヴィヴァーチェ」や「カーザ・ヴィヴァーチェ」に見られる、イタリアのVIVA社社製の鏡面仕上げのドアや機能性と美しさが共存した自社開発のキッチンなどを用いたモダンでシャープでラグジュアリーなイメージが強いため、ナチュラルなテイストは不得手と思われがちなんですが、決してそんなことはありません。むしろ創業当初はこんな柔らかいウッディな感じの家創りが多かったんです。今現在も木のぬくもりが存分に味わえるナチュラルで柔らかい雰囲気の「カーザ・アルベロ」というラインを納得住宅工房の1つの柱として推奨しています。


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大久保 一見すると納得住宅工房さんの家創りの特徴は、クールでシャープに見えます。でも、細かいディテールをよく見ていくと、漆喰の壁や無垢のフローリングなど天然素材を多用した、実はナチュラルで気持ちいい家創りだ!と納得させられます。納得住宅工房さんのならではの多面性ですね! あとは平屋というリクエストもナチュラルなテイストと合致していました。ちょっと前にこの連載で取材させていただいた静岡市の高台にあるチャップマンさんの家も木造りの大きな平屋でしたが、この手の平屋のリクエストを久保社長が設計を手掛けると、和風ではなくナチュラルアメリカンテイストになると感じました。これは意識されてのことなのでしょうか?


久保 鋭いところを突きますね。実際に私がこれまで設計してきた平屋の注文住宅の中でも、チャップマンさん邸しかり、この木原さん邸しかり、実に多くの和室の空間も創らせていただいておりますので、決して平屋=ナチュラル=アメリカンという訳ではありません。大正時代やそれ以前の時代の和の意匠の趣…瓦や日本庭園のある家は、とても素敵だと思います。昭和の時代になってからは、和風と洋風が折衷し出した訳のわからないミックス感な家創り…中途半端なフローリングや「なんちゃって洋風」なダイニングやリビング…そんな昭和っぽい古臭さに抵抗があるんです。そんな抵抗心から自然とナチュラルアメリカンテイストに寄せてしまうのかも知れません。剥き出しの梁などはまさにその好例です。しかし木原さん邸のお写真を拝見すると、天然木材を使った梁も天井も良い色になってきましたね。お引き渡しの時は白木に近い色味だったですが、無垢だから熟成されて、こんな飴色に変わっていくんですよ。


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大久保 経年変化も木造りの醍醐味ということですね。そういえば外のウッドデッキは雨に当たってなのか、もっと黒ずんでいました。古民家みたいで雰囲気がありましたよ。


久保 そう、やはり木は屋外で使うとエイジングが早いんです。それも味だと捉えてくださればいいのですが、いつまでもキレイな外観をお望みならば本物の木は内観だけに留めるのが賢明でしょう。玄関回りも木原さんご夫婦から木の仕様をリクエストされましたが、外観では木の仕様をデッキのみにして、玄関の軒は本物の木を使わずに、深いダークブラウンのALC(軽量気泡コンクリート)を提案し採用しました。つまり、家の中で使う木は経済的だし、家族の手や足が触れる部分はナチュラルな木の方が気持ちよくて相性抜群ですが、屋外だと耐久性の問題やお手入れの苦労がつきまとうワケです。なので、足裏が触れるデッキ部分だけは木造りにして、手で触れることのない玄関の軒や外観部分は木は使わずに、色味でナチュラル感を出しました。


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大久保 結果、今ではこの外観の仕様も、久保社長からの実用的な提案を採用して本当に良かった!とおっしゃっておりました。離れのトレーニングルームはもちろん、そこにアクセスするためのナチュラルウッドデッキの導線にもご主人は大満足でした…トレーニング前後の素足に気持ちいいと! 奥さまも玄関横のナチュラル素材を多用したヘアサロンルームについてとても嬉しそうに、誇らしそうにお話をされていました。特に納得住宅工房さん手造りの鏡台のウッドフレームは秀逸でした! それぞれの空間の配置は久保社長のアイデアですか?


久保 はい。考えたのは家族の動線と、夫婦2人の関係性でした。深くヒアリングをさせていただいた結果、お互いの知人が玄関横のヘアサロン、離れのトレーニングルームのどちらに来られようとも、靴を脱いで家の中に招き入れることなく、お互いの楽しい趣味や特技の時間が守られる空間になるようにレイアウトしました。何度も何度もヒアリングを重ねた結果、趣味や特技を生かして地域の方たちと交わる、とても地元愛のあるご夫婦とわかったので、むしろリビングやダイニングは木原さんご夫婦および家族4人だけの聖域、家族だけのプライベート空間にしたほうが居心地が良い家になると思って設計したのです。お子さんの友達が来てもいいように子供部屋をリビングからちょっと離しているのも同様の理由です。奥さまのヘアサロンルームが玄関から入ったすぐ横にあり、旦那さまのトレーニングルームが一番奥側の離れに位置するのも、旦那さんがご自身の夢よりも奥さまの夢を叶えることを最重要視していたからに他なりません。もちろんトレーニングルームを離れにしたのは、サンドバッグ打ちによる音対策という実用面も考えた配置です。


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大久保 なるほど。美容師の奥さまならではの水回りにこだわったディテール…例えば、通常の3倍の大きさの鏡を備えた広い洗面所も、離れのトレーニングルームまで見渡せるベストポジションに配置されたキッチンも、奥さまのご希望を第一義に考えたママファーストな思いの発露というワケですね!


久保 白基調にナチュラルな木の茶色を差した2トーンな内装を徹底しながらも、ヘアサロンルームの壁と洗面所のタイルにライムグリーンを用いたのも、奥さまのお好きな色だと聞いていたからです。離れのトレーニングルームだけ黒一色で母屋のトーンと全く異なるのも、これで納得といった感じではないでしょうか!?


大久保 いやー、、、、、さすが久保社長!奥が深い。ここまで考えられて、家創りをされているとは………。納得住宅工房さんがヒアリング…つまり雑誌作りの世界で言うところの取材にとても重きを置いている! そして、ご家族のご希望(キーワード)をきちんと編集=設計し、魅力ある最高のキャッチコピー=空間が生まれ、素晴らしいコンテンツ=お家に仕上がっている…皆さまがとても満足されている理由がよく理解できました。久保さんの設計秘話を聞くことで、より地域活性化でSDGsな幸せのキーワードが家創りのディテールに発見できました! ありがとうございました。


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[納得住宅工房Co.,Ltd.]代表取締役CEO 久保 淳
1999年、納得住宅工房を設立。静岡県内にショールーム5店舗とモデルハウス2棟を展開。住宅、エクステリアに関する数々の賞を受賞。施主の感性や理想を引き出す設計提案、欧州のトレンドや伝統を取り入れた建材やオーガニック素材、ハイスペックな住宅性能をトータルコーディネートしたオーダーメイド住宅を年間150棟ほど手掛けている。アパレルショップ「ポルタロッサ」のオーナーでもある。https://www.maduro-style.com


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[RRデジタルメディア]代表取締役 大久保清彦
『LEON』を企画創刊し、その後『OCEANS』、『ローリング・ストーン日本版』を企画創刊。『ヨガジャーナル日本版』のオンラインを立ち上げ、セブン&アイ出版の常務執行役員を経て、2018年に設立したRRデジタルメディアでは、自身が総編集長を務める『MADURO』の他、『ソトコト』、『THE RAKE』を傘下に収め、オンライン化を果たす。自身も一児のパパとして、仕事と子育ての両立に奮闘中。https://maduro-online.jp

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