FASHION
2025.09.25
革傷は人生の旅の証、高級革ブランド「TOUR RECORD」を立ち上げた伊禮門 悟さんの夢
その革製品は、使い込むほどに持ち主の人生を映し出す、まるで人生の証を刻む相棒のような存在。素材選び、仕上げ、販売に至るまで他にはない姿勢で挑むレザーブランド「TOUR RECORD」を立ち上げた伊禮門さんに、革製品に込める思い、職人との共鳴の日々について話を聞いた。

株式会社BiS 代表取締役 伊禮門 悟(いれいじょう さとる)さん
1994年12月22日生まれ、神奈川県出身。2021年4月、神奈川県綾瀬市に株式会社BiSを設立し、テレビパブリシティに関する代理店業務を開始。レザーウォレットなど高級革小物の「TOUR RECORD」(トゥールレコード)、高級スカジャン「JacksonSquare Tokyo Shibuya」(ジャクソンスクエア)、など、数々のブランドをプロデュースしている。著書に「遠回りしても大丈夫。」「夢を追う君たちへ ~夢が人生を創る~」(ともに発行ファストブック)がある。
1994年12月22日生まれ、神奈川県出身。2021年4月、神奈川県綾瀬市に株式会社BiSを設立し、テレビパブリシティに関する代理店業務を開始。レザーウォレットなど高級革小物の「TOUR RECORD」(トゥールレコード)、高級スカジャン「JacksonSquare Tokyo Shibuya」(ジャクソンスクエア)、など、数々のブランドをプロデュースしている。著書に「遠回りしても大丈夫。」「夢を追う君たちへ ~夢が人生を創る~」(ともに発行ファストブック)がある。
01|旅の偶然が教えてくれた“モノの記憶”

「旅先でスマホをなくしたんです。最初は焦りましたよ。でも、そのおかげで道を聞いたり人に声をかけたりした自分に気がついて、旅そのものの濃さが変わったんです」。
伊禮門さんがTOUR RECORDブランドの原点を語るとき、必ずこのエピソードを思い出す。韓国を旅していたとき、タクシーにスマートフォンを置き忘れた不安と不便を抱えながらも、現地の人に助けられた。そんな偶然の出会いが後に大切な気づきを与えてくれた。
なぜ革製品なのか。そこに込める思いについて話を聞いた。
なぜ革製品なのか。そこに込める思いについて話を聞いた。
「その時に手にしたパスポートケースもそう。持ち歩いている革の小物が、自分の旅を記憶してくれる存在になっていたんです。革の表面についた傷や、ポケットの中で擦れた色の変化は旅の記録そのものでした」。
時間が経つほど革には傷や色の変化が現れる。それは単なる傷ではなく、旅の証だと伊禮門さんは語る。やがて毎日持ち歩いているウォレットやキーケースが、旅の行く先々を綴るノートのようになっていく。その実感が、革製品ブランド「TOUR RECORD」に込めた思いの原点だった。
02|TOUR RECORDという名前に託された「人生の旅」

「ブランド名の『TOUR RECORD』に込めたのは“旅を記録する”という意味です。でもそれは海外旅行だけじゃなく、僕たちの人生そのものが旅だということ。ウォレットやキーケースは、その旅を1番近くで見ている相棒です」。
確かに、革小物は日々の生活の中で、最も長い時間を共に過ごす存在かもしれない。手に触れ、ポケットに収まり、時に傷つきながらも持ち主の個性まで刻む。だからこそ「相棒」という言葉が自然に出るのだろう。
「身近な革製品は、持ち主の人生という旅を記録してくれる。ウォレットやバッグって、毎日触るじゃないですか。朝起きて外に出るとき、必ず手にする。もしかしたら家族よりも長い時間を一緒に過ごしているかもしれない」。

03|革の個性は、その動物が生きた証

TOUR RECORDに付いている傷、実は購入者の手に渡る前から存在する。素材にはクロコダイルやエレファント、パイソンといったエキゾチックレザーを積極的に扱っているが、なぜ最初から傷がついている革を使うのだろうか?
「クロコダイルは強さも美しさも持っている。一方で、傷や個体差が必ずあります。でも僕はそれを欠点だとは思わなくて。自然の中でその動物が生きてきた証として、僕は傷を残したまま使いたい」。
ブランドのロゴにも“傷”が象徴として刻まれている。そこには、均質な美しさよりも、生き物が自然の中で刻んだ唯一無二の表情を大切にするという哲学が込められているのだという。
「象革やラクダ革もそうです。大きな傷や荒々しい表情がある。けれど、それはその動物が自然や歴史を生き抜いた証。そこにしかない迫力があるんです」。
04|オーダーではなく、プロの職人との共鳴を

伊禮門さんは技術者でないからこそ、固定概念に縛られない発想を持っていた。自らが目指す革製品を作り上げるために、職人との関係性にも独特の化学反応を生み出している。それを象徴するのはウォレットの裏地に使われているというラクダ革だ。
「僕は職人じゃない。でも職人さんと会話をする中でアイデアが生まれ、お互いの挑戦が形になっていきます。一般的にウォレットの裏地に使われるのは牛革。ラクダの革を使ってみたいと伝えたとき、職人さんは『みんな使いたがらないのに!』と驚かれました。でも実際に仕上げてみたら、やっぱり誰も見たことがないような表情が出ました」。

ラクダ革はゴツゴツとしていて、一般的な高級革製品の基準からすれば扱いにくい素材。だが、その表情にこそ伊禮門さんは力を感じたという。
革製品づくりの伝統は長い歴史に支えられているが、対話しながらその伝統技術を広げていく。伊禮門さんが語るその姿勢は、革職人との関係性をより強固にしているようだった。
革製品づくりの伝統は長い歴史に支えられているが、対話しながらその伝統技術を広げていく。伊禮門さんが語るその姿勢は、革職人との関係性をより強固にしているようだった。
「『こうしてほしい』とオーダーするのではなく、『こんなのどうですか?』と投げかける。そこから始まる職人さんとのキャッチボールの中で、新しい表現を生み出していければと思っています」。
05|ようやく手に入れたものに、人生の重みが宿る

「僕の祖母の時代は、身近に“良いもの”がたくさんあったんです。着物や桐箪笥、上質な器(うつわ)。職人の手で作られたものが日常のすぐそばにあった。だけど今の若者にとって“本物”との出会いは容易ではない。便利さと低価格ばかりが求められて、本当に良いものは知る人ぞ知る場所に隠れてしまっている」。
伊禮門さんが「若い世代に届けたい」と語る背景には、そんな危機感があった。
「若い人たちだって“良いもの”に興味がない訳じゃない。知らないだけなんです。でも、ちゃんと出会えれば『良いですね』、『使ってみたい』と思ってくれるんです」。
本物の革の表情、使い込むほどに変化していく色艶、そして職人の仕事の温かさ。そうした体験を、次の世代へと渡していくこと。TOUR RECORDはそんな文化の継承者でもある。
「これまでの世代の人々は、『このクルマを買いたいから』『このバイクを買いたいから』『昇進したからこのお財布を買おう』と、人生の節目節目に“良いもの”を手に取ってきた。そういう青春やモチベーションにつながる節目の文化も、僕は残していきたいと思っています」。
手を伸ばしてようやく届いたものは、見るたびにそこに至るまでの努力の記憶も蘇る。年月をかけてモノへと刻まれた想いは、持ち主のその後の人生をも彩り続けるだろう。

そして、使い込むほどにやわらかくなじみ、持ち主の動きや癖をそのまま記録していく。TOUR RECORDで扱っているクロコダイルやエレファント、パイソンといった素材は、最初は硬さや個性が際立つ素材だが、あえてこの変化を楽しむものだという。
「シワや色の変化は、持ち主の人生そのものだと思う。革は持つ人と一緒に歩みを重ね、育っていく。そこにあるのは、革製品と持ち主の共生とも言える関係です。TOURRECORDを選んでくれた人には、人生の相棒を手に入れたと思ってもらいたい」。
06|“良いもの”を再び日常の風景へ
伊禮門さんが目指す夢は、日本の地域文化や職人の技術が、再び日常の風景に戻ってくる未来だ。
「大型のショッピングモールじゃなくて、昔の商店街みたいな場所にまた“本物”が並ぶといい。僕たちだけでは難しいかもしれないけれど、そういう流れを生み出すきっかけになればと思っています」。
そんな想いは、伊禮門さんの職人との向き合い方にも表れている。職人が割いてくれる打ち合わせの時間や素材探し、構想の時間——表に見えないプロセスも含めて、伊禮門さんは職人に正当な対価を支払うべきと考えている。
「たとえば寿司店では仕入れから仕込みまで全て込みで“価値”と評価されていると思う。けど、モノになると途端に『高すぎるね』と言われてしまう。仕入れ値と工賃だけで判断されるのは悲しいことです。だから僕は、かけてくれた時間や職人の持つ技術、本気の仕事をしてくれているということにしっかりと向き合っていきたいですね」。
だからTOUR RECORDは、製品だけでなくその「背景」から語りながら届けている。作り手の顔が見えるものにこそ、人の心は動く。どんなものづくりにおいても、製品の本当の価値は、作り手が本気で仕事をしているところに宿っている。
そして現在も、藍染め職人との出会いから、新たなブランドの構想が進んでいる。
「本物を届ける」という覚悟、「職人を支える」という責任感、「若い世代につなぐ」という夢。
革は時間と共に変化する。持ち主の人生を映しながら、共に歩んでいく。TOUR RECORDが作るのは、単なる革製品ではない。それは、人生を見守り共に歩むパートナーだった。
「本物を届ける」という覚悟、「職人を支える」という責任感、「若い世代につなぐ」という夢。
革は時間と共に変化する。持ち主の人生を映しながら、共に歩んでいく。TOUR RECORDが作るのは、単なる革製品ではない。それは、人生を見守り共に歩むパートナーだった。

モデル 江島柚希さん(中央)
TOUR RECORD公式モデル。湘南ベルマーレフットサルクラブ 公式アンバサダー、湘南ゴールドエナジー 公式アンバサダー、YouTubeチャンネル「マックス探検隊」MC、クロスFMラジオ出演など。
モデル Rinta Iwasakiさん(手前)
TOUR RECORD公式モデル。湘南ベルマーレフットサルクラブ 公式アンバサダー、、湘南ゴールドエナジー 公式アンバサダー、神奈川県綾瀬市PR映像出演、Popteen Web雑誌掲載など。
モデル 竹林雄瞬さん(右)
埼玉ランウェイ、STAGE ON ME (韓国)などに出演。
モデル 佐藤和貴さん(左)
TOUR RECORDスタッフ兼モデル。
TOUR RECORD公式モデル。湘南ベルマーレフットサルクラブ 公式アンバサダー、湘南ゴールドエナジー 公式アンバサダー、YouTubeチャンネル「マックス探検隊」MC、クロスFMラジオ出演など。
モデル Rinta Iwasakiさん(手前)
TOUR RECORD公式モデル。湘南ベルマーレフットサルクラブ 公式アンバサダー、、湘南ゴールドエナジー 公式アンバサダー、神奈川県綾瀬市PR映像出演、Popteen Web雑誌掲載など。
モデル 竹林雄瞬さん(右)
埼玉ランウェイ、STAGE ON ME (韓国)などに出演。
モデル 佐藤和貴さん(左)
TOUR RECORDスタッフ兼モデル。


TOUR RECORDではクロコダイルレザー、エレファントレザー、バイソンレザーなど、ラグジュアリーレザーの頂点と称される希少素材を使う。天然の腑柄(ふがら)が一枚ごとに異なり、世界に2つと存在しない、唯一無二の個性を纏うレザー。長財布やキーケースなどのラインアップがある。

購入はTOUR RECORD店舗でのみ可能で、購入すると桐箱に入った製品を手にすることができる。この桐箱も40年以上の経験を持つ木工職人が手掛けたもので、天然素材の特性を活かした上品な手触りと高い気密性を備え、革製品を湿気や外気から守る精密な構造となっている。
TOUR RECORD(トゥールレコード)
所在地/東京都新宿区西新宿6-12-4 コイトビル8階
営業時間/10:00~19:00(※来店は予約制)
定 休 日/不定休
TEL/03-6626-9695(※来店は予約が必要)
TOUR RECORD公式サイト https://tourrecord.jp/
取材・文/大竹菜々子 撮影/鈴乃
所在地/東京都新宿区西新宿6-12-4 コイトビル8階
営業時間/10:00~19:00(※来店は予約制)
定 休 日/不定休
TEL/03-6626-9695(※来店は予約が必要)
TOUR RECORD公式サイト https://tourrecord.jp/
取材・文/大竹菜々子 撮影/鈴乃