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人生100年時代をマルチステージ・マルチスキルに生きる

人生100年時代をマルチステージ・マルチスキルに生きる

「DIGITABLE LIFE〜ニューノーマル時代の生き方〜」。ソトコトオンラインとMADURO ONLINEの隔週クロス連載。毎月10日にソトコトオンライン、25日にMADURO ONLINEで更新し、Forbes JAPANウェブでも連載が読めます。コロナウィルスの感染拡大は、私たちの生活を変え、経済・社会にも大きな影響を与えています。私たちは「新しい日常」を模索し続け、リモートワークやワーケーション、ネットショッピングの利用など、デジタルを活用することを1つの解決策として生活に取り入れ始めています。第8回目は、人生100年時代に必要なスキルについて紹介していきます。

超高齢化社会がやってくる


「人生100年時代」という言葉を良く聞くようになりました。医療の発達、栄養状態や衛生環境の改善によって寿命は延び、100歳まで生きるのが当たり前の時代になるということです。誰も自分がいつまで生きるのかわかりませんが、誰しも100歳以上生きても不思議ではない時代になったのです。


国内の100歳以上の人口は、2020年には8万人を超え、50年連続で過去最高を更新し、65歳以上人口は3617万人・総人口の28.7%まで増加しました。2030年には日本の総人口は1億1,912万人に減少し、そのうち31.3%にあたる3,715万人が高齢者となると予測されています。国内人口の1/3が高齢者となり、世界で最も高齢化が進む超高齢化社会となることは明白であり、私たちは様々な影響を受けることになるでしょう。


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人生100年時代に私たちはどう生きるべきか


「人生100年時代」に世の中はどう変わっているのでしょうか。「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)」の著者である英国リンダ・グラットン教授は「寿命が今後伸びていくにあたって、国・組織・個人が今までの生き方の見直しを迫られ、新しい社会構造や価値観が生まれてくる」と示唆しています。超長寿社会に向けて、世界中の専門家の間で共通に理解されていることは、「長く生きるためには、長く働かなければならない」です。「LIFE  SHIFT」の共著者で経済学者のアンドリュー・スコット氏の試算によれば、100年の人生を生きるためには、人は少なくとも75歳から85歳まで働かなければならなくなるだろうと指摘しています。


これからは80歳前後まで働かなければならないと考えると、「仕事」の期間が、今までの40年から60年に延びることになり、そこに新たな課題が発生することになります。その課題とは、60年間もの長い期間、たった1つの仕事(ステージ)、1つの技能(スキル)を身につけているだけでは、長い人生の多彩な状況に対応できないということです。これからは、時代の状況に応じて、意識してステージを変え、新しいスキルを身につけることが求められてきます。そのためには、「仕事」の60年間をさらに細分化し、マルチステージに分け、ステージごとに自らのスキルを、時代に合わせて向上・進化させることが必要になってくるでしょう。


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人生100年時代をマルチステージ・マルチスキルに生きる


人生100年時代には、人生の時間が20年近く長くなります。しかし、従来の考え方に縛られ、60歳で引退生活に入ると考えてしまうと、100歳までの40年はとても長く、退屈な日々が続くことになります。また、金銭的にも困難が予想されており、長く働くことは避けられない時代になってくるでしょう。


最近では、再雇用延長で65歳まで働ける会社も増えてはきてはいますが、60歳前後を境に、給与水準も下がり、あまり遣り甲斐のある仕事に恵まれることが少ないようです。ならば、他の職を探そうとしても、従来の雇用モデルで身につけたシングルスキルだけでは、時代の変化、社会の変化に対応できません。もちろんシングルスキルでも時代に合わせ磨きをかけた唯一無二のレベルまで高めていけば別の話ですが、多くの人は、一般的な1つのスキルを持つだけで、再雇用延長の道を選ぶしかないのが現実です。


これからは人生100年時代を想定して、自らの価値を高めていくことが、未来の不安を無くす唯一の方法です。人生を幾つかのステージに分け、複数のスキルを高めて、自らの価値を高め続けていくことが必要になります。また、従来の40年間の中距離走から60年間の長距離走の仕事人生になりますので、自分なりのペース配分で走り続けることが可能となり、マルチステージ・マルチスキルに生きる生き方は、人生のチャンスを広げることにも繋がっていくのです。


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マルチステージ・マルチスキルの私の事例


ここでマルチステージ・マルチスキルの事例として私のこれまでの経験をお話させていただきます。


今から20年程前、私が30歳後半の頃、年金問題が世間を騒がせていました。私は、漠然と「年金は期待できない」「年金無しでも大丈夫にしよう」と考えるようになりました。当時は、人生100年時代という言葉はありませんでしたが、80歳くらいまで働く必要があると漠然と考えるようになりました。 


当時の私は、既に会社の社長を務めていましたが、自分で起業したとはいえ、資本のほとんどは他人資本であったため、所詮はサラリーマン社長でした。それでは、到底80歳までは働き続けることはできないと焦りを感じていました。その頃から、私は、目の前の仕事を進めると同時に、自分のスキルを常に見直し、足りないところは、学び・経験することを意識するようにしました。


既に、20代ではSEとして「システムをつくる」スキルを身につけ、30代では営業、企画を経て、ベンチャー起業を経験することができていました。当時は会社を起業して間もない頃でしたので、まずは経営者として「会社をつくる(成長させる)」ことに注力しました。経営者は孤独といいますが、経営者は指示をしてくれる人がいませんので、自分で考え、行動するというなかなかできない経験とスキルを身に着けることができました。その後、40代では、大きな組織の中で周りを説得しながら「事業をつくる」ことも経験することができました。周りを説得するスキルやダイナミックに多くの人を動かす得難い経験とスキルを身につけることが出来たことは本当に貴重であったと思っています。


その後、50歳を過ぎ、現在の会社を自分資本で起業し、自分のやりたい「人をつくる(育てる)」を事業として、現在は充実した日々を送っています。自分のやりたいことを、他人にとやかく言われることも無く、自分のペースで進めることが出来ています。もっと若くから行動をしておけば良かったと思うこともありますが、20~40歳代に様々な経験をしてスキルを磨いてきたことが今の礎になっていると考えると、私にとっては、ベストのタイミングであったと思っています。逆に、もし今から20年前にマルチステージ・マルチスキルの人生を選択していなければ、現在は、もっと不安な日々を過ごしていただろうと思います。


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デジタルが長い仕事人生の最高のサポーターになる


 人生100年時代となり、私たちはマルチステージ・マルチスキルで生きていくことが求められています。その時には、デジタルは強い味方になります。そう実感したのは、コロナ禍に半年間完全リモートワークを経験したことがきっかけです。最初は、戸惑いも感じたリモートワークでしたが、慣れるに従い、効率的に仕事を進めることが可能になり、時間も距離も超えて多くの人々と容易にコミュニケーションがとれることがわかりました。


同時に、年齢による体力の衰えを補ってくれる可能性も見出すことができました。若い頃は、体力に自信があり早朝から深夜まで働き続けても一晩眠れば回復していましたが、50歳も過ぎると、体力的な制限がでてきてしまうのは仕方がありません。しかし、デジタルをうまく活用すると、時間と距離の制約を超え、年齢による体力の衰えをサポートしてくれます。最近、同年代や少し上の年代の方々とお話をするときには、「年寄りほどデジタルを活用すべきです」「齢を重ねるほどデジタルは最高のサポーターとなります」と話をしています。


デジタルは、これから続く長い仕事人生の最高のサポーターとなってくれるのです。


(前回連載はソトコトオンラインのこちらへ)。


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鈴木康弘
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員も兼任。

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