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仕事もプライベートもニュートラルでありたい/経営者のONとOFF第6回 安藤欽哉さん

仕事もプライベートもニュートラルでありたい/経営者のONとOFF第6回 安藤欽哉さん

格好いい経営者にはON(表)とOFF(裏)がある。今回はゲームなどのデジタルエンターテインメント業界で、セールスプロモーションやキャンペーンなどを手がける企業の代表取締役、安藤欽哉さんに話を伺いました。大手の家庭用ゲーム機メーカーやゲームソフトメーカーをクライアントに多数持ち、創業から20年強、経営者としてひたすら走り続けてきた安藤社長の仕事、そして休日の過ごし方とは?
株式会社インタープレイ 代表取締役
安藤欽哉さん
1958年岐阜県出身。大学卒業後、機械系の商社に入社。30歳のときに、名古屋にある販促物を手がける会社へ転職。1997年、39歳で大手ゲームメーカーの販促物やキャンペーン、イベントなどを手がけるインタープレイを設立。

ON STYLE

「ファンとゲーム業界のために付加価値を追求し続ける」

“たまたま”の縁から飛び込んだ業界
「当時は特別にゲームが大好きというわけではなかったんですよ。もちろん、今はゲームをしますけど」。

安藤さんに現在の会社を興したきっかけを尋ねると、そんな意外な答えが返ってきた。

インタープレイは、誰もが知っているような大手ゲームメーカーを多数クライアントに持ち、そのセールスプロモーション(以下SP)を手がける会社だ。そもそもゲーム業界は常に多くのファンを擁し、特に家庭用ゲーム機がブームになって以降、人気が高い業界。しかし、安藤さんの起業のきっかけは”たまたま”(偶然)だった。

「販促物を手がけている名古屋の会社に転職したのですが、クライアントの一つにゲーム関連の中古商品を扱うフランチャイズ会社があったんです。当時、全国で200店舗ぐらいあり、かなりの規模でした。ある時、そのクライアントから『年末に集客するためのいいキャンペーンはないか』と相談されたので、ゲームメーカーの画像を使わせてもらって、カレンダーを作ってみたらどうか、と提案したんですよ。そうしたら、『やってくれないか』と頼まれまして、その全国規模の会社の名刺を持ってゲームメーカーから画像を借りる交渉をすることになったんです」。

「その後、やりとりをしていくうちに、様々なゲームメーカーとのお付き合いが始まりました」。
起業後から売り上げが好調も環境が激変。SPは日々試行錯誤
安藤さんいわく「たまたま」という縁から、多数の大手ゲームメーカーと取引するようになり、39歳でインタープレイを設立。

創業から10年間は売り上げが右肩上がりで、「パッケージゲーム」と呼ばれるジャンルにおいては、国内の大手ゲームメーカーのほとんどが取引先になった。中でも、各社の主力商品を任されるまでに成長。ちなみに、「パッケージゲーム」とは、ゲームソフトを本体にセットして使用するゲームのことで、ダウンロードするタイプの「モバイルゲーム」と呼び分けているのだという。

しかし、近年はパソコンや携帯、タブレットなどの急速な普及により、ゲームを取り巻く状況も大きく変化した。

「パッケージゲームが主流だった時代は、売り場の装飾やそれに必要な販促物の制作などがSPの主でしたが、モバイルゲームにはそれが必要なくなってしまった。代わりに、インターネットやSNSなどを使ったオンラインプロモーションが必須の時代になりました。従来とはアプローチの仕方がまったく異なるので、日々試行錯誤しています」。
インタープレイ社内の様子。
根強いファンのために付加価値を提供していきたい
安藤さんはパッケージゲームのみならず、モバイルゲームが台頭してきた昨今でも、メーカーが大切にしているファンのことを日々考えている。

「強いファンの方々に満足していただくためにはどうしたらよいのかを常に考えるようにしています。例えば、初回限定版のような形で、グッズをつけるというように」。

「弊社は幸いなことに多くの取引先があり、ゲームに特化したSP業界では屈指の信頼とシェアを得ていると自負しています。お客様からご相談をいただくことも多いので、ご要望を汲み取りながら、率先してアイデアをお出しできるように、私もスタッフたちも、提案を増やす努力をしていきたいですね」。

パッケージゲームの販促物を使うSPではこれまで通り高いシェアを。そして、近年ではモバイルゲームのSPとして、SNSやデジタルイベントもバランス良く取り組まれている。

OFF STYLE

「音楽もスポーツも、自分を発信するメディアの一つ」

学生の頃から親しんできた音楽。現在は自宅で電子ドラムを叩く
「趣味という趣味が特にないんですよ(笑)」。

と笑いながら話す安藤さんだが、小学生の頃から「サイモン&ガーファンクル」や「ビートルズ」などの洋楽にふれ、中学・高校時代はプログレ(プログレッシブ・ロック)やジャズを好んで聴き、30歳を過ぎた頃にバンドを結成するほど、音楽カルチャーから少なくない影響を受けている。

以来、常に音楽のある生活を送ってきた。「趣味と言えるほどではない」とは謙遜するが、自宅には今も電子ドラムまである。

「60歳を迎えたときに、自分へのご褒美として購入しました。主に休日に叩いています。だいたい1~2時間程度。ここ1年半ぐらいはテレワークもあって、たまに仕事の合間にドラムを叩くこともあります。気分転換になっていいですね」。

「バンドも再結成したいと思っているのですが、誰もついてきてくれなくて…。ジャズでなくてもいいからやろうぜって言っているんですけど。いつか組めたらいいなと思っています(笑)」。
安藤さんが今も大切にしているレコードの一部。プログレでは外すことのできない名盤。(左)ピンク・フロイド「ATOM HEART MOTHER」(Harvest/1970)、(右)イエス「RELAYER」(Atlantic/1974)。
ジャズではかなり貴重な、当時もののレコードを多数所有されている。(左上)ジョン・コルトレーン「BLACK PEARLS」(Prestige/1964)、(右上)ビル・エヴァンス「BILL EVANS TRIO WITH SYMPHONY ORCHESTRA」(Verve/1966)、(左下)ザ・ウィントン・ケリー・トリオ・ウィズ・ジミー・コブ/ロン・マクルーア 「FULL VIEW」(Milestone/1968)、(右下) ‎ソニー・ロリンズ「SAXOPHONE COLOSSUS」(Prestige/1956) 。
そこまで音楽に接していながら、「趣味とはいえない」と言い切る安藤さん。その理由は?

「例えば、ジャズが好きで長年聴いてきましたが、雑誌や本を読んだことはほとんどなくて、マニアックな知識は無いんです。正確には、知識が無いわけではないけど、ちゃんと“勉強”してはいない。聴くことは大好きですが、やはり…趣味と言うと恥ずかしいかな、と」。
趣味と言えるほどではなくても経験することが大切
音楽関連以外でも、ゴルフやテニスといったスポーツを楽しんだりと、嗜む幅は広い。趣味とまでは言えなくても、なぜそこまでアグレッシブになれるのだろうか。

「好奇心が旺盛なのかもしれません。なんでもいっちょかんでおきたいんでしょうね(笑)。一度経験してみないと、そのことについては何も言えないと思うので。多くのことを経験したり、見たりすることで、あらゆるものに対してニュートラルでいられそうな気がするし、常にそうありたいという思いが強いんでしょう」。

「もし私が何かの偏見を持っていて、最初から抵抗感があると、大切なことを見逃してしまうかもしれない。けれど、ニュートラルでいられたら、それに気づける可能性がある。ニュートラルでいるっていうのはとても難しいけど、できるだけ様々なものに接することで、自分なりの考えや答えを持っていたいですね」。

常にニュートラルでありたいという安藤さんにとって、仕事とプライベートにもその垣根はないという。

「私の中では、仕事、ゴルフ、テニス、音楽…すべてが並列。半分が仕事で、半分がプライベートというのではなく、仕事も趣味も自分を構成している一つで、自分のことを発信する方法の一つです。発信メディアの一つ、みたいな感覚かな」。
ジャズ用語でもあり、社名でもあるインタープレイとは?
同社のホームページにある「PHILOSOPHY」(企業理念)には、ドラムやサクソフォーンなどのイラストとともに、ジャズの例えを絡めながら、「インタープレイ」という社名に込められた思いや企業理念が書かれている。

「ジャズ用語でも使われるインタープレイとは、『優れたプレイヤーたちが共演し、お互いに触発し合いながら素晴らしいインプロビゼーション演奏をすること』を意味します。社名をつけたときは、いい言葉だなという程度に思っていたんですが、今では会社のあり方そのもの。弊社は企画営業を行う会社で、自社だけでは成り立たず、いろいろな会社・人の協力があって初めてアウトプットができる――つまり、我々がハブにいることによって、何らかが生み出されていると考えると、この名前で良かったなと思います」。
●インタープレイ
愛知県名古屋市中区北の丸1-17-31清原名古屋ビル6F
052-218-5523
トヨダリョウ/撮影、垣野雅史/取材・文
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