再開発中の渋谷で出会う路地裏グルメ！「とりかつ CHICKEN」で人気3種を実食

再開発が進む渋谷、路地裏ビルに暖簾がかかる老舗「とりかつ CHICKEN」。半世紀もの間愛され続けている名店で、とりかつ・ハムかつ・コロッケが味わえる「人気定食」を実食。看板を頼りに辿り着く穴場は、知っていると少し自慢できる名店です。

渋谷の再開発エリアに残る激渋定食店「とりかつ CHICKEN」

10代の頃から何度も歩いた渋谷も、再開発で大きく姿を変えました。ビルが建ち並び新しい店が増える一方で、昔ながらの味を守る店は今どれくらい残っているのだろう…そんな思いから、以前から気になっていた「とりかつ CHICKEN」を訪ねてみることにしました。

ここを訪れるのは今回が初めて。半世紀以上続く老舗の味わいを体験できるのか、期待に胸を膨らませながら足を運びます。以前から知る人ぞ知る名店と聞いていただけに、ようやく訪れることができる嬉しさもありました。

渋谷駅から道玄坂を上っていく途中にあるしぶや百軒店（ひゃっけんだな）という路地裏エリア。昭和の面影を残すその一角を進むと、「とりかつ CHICKEN」と書かれた縦長の看板が見えます。

気を抜くと見落としてしまいそうな存在感ですが、それこそが隠れ家の証。ちょうどその看板の前では、外国人観光客らしき人がスマホを構え、外観を写真に収めていました。

建物に入って階段を上がると「この奥です」と赤い矢印のプレートが誘い、さらに奥まった場所には白い暖簾が揺れる入口が現れます。表通りの喧騒からわずか数十メートルしか離れていないのに、まるで別世界に踏み込んだような高揚感。まさに隠れダンジョンを発見したときのワクワク感です。

この日は平日の午前10時52分に到着。開店を待つ7人の列がすでにできていました。

驚いたことに全員が外国人旅行客で、渋谷の路地裏にありながら世界中の人を惹きつける店。特別な一軒だとこの時点で確信します。

11時になり、入店。V字型のカウンターと小さなテーブルが迎えてくれ、お茶や箸をセルフで用意するスタイルが懐かしい定食店らしさを感じます。壁に並ぶ年季の入った手書きメニューが、この店の歴史を物語っていました。

店の看板メニュー「人気定食」をオーダー

今回は、とりかつ・ハムかつ・コロッケが一度に楽しめる「人気定食」を注文。揚げたてが運ばれてきた瞬間、衣の香ばしさと立ちのぼる湯気に思わず唾を飲み込みました。

一番人気のとりかつは、箸を入れると衣はサクッと音を立て、中からふんわりジューシーな肉汁があふれ出します。ひと口食べて驚いたのは、その柔らかさ。

鶏肉なのに繊維をまったく感じさせず、舌の上でほろりとほどけていくような食感。「こんなに柔らかいとりかつは初めてだ」と心の中で声をあげてしまいました。

コロッケはタネがぎっしり詰まり、じゃがいもの甘みと衣の香ばしさが絶妙なバランス。ハムかつは厚みのあるハムを使い、噛むほどにシンプルな旨みが広がります。どれも思わず白ご飯が進む3種、それぞれが主役級の存在感がありながら、定食として味わうことで、昔ながらの満足感を得られました。

スタッフの方の気遣いと漬物の味わい

揚げたての揚げ物に夢中になっていると、カウンター越しに女性スタッフの方から「よかったら、この漬物もご飯にのせて食べてみて」と声をかけていただきました。お皿に盛られた素朴な漬物を白ご飯にのせると、揚げ物のコクを引き立てながら、口の中をすっきりさせてくれる絶妙な存在に。

食べる手を少し休めた瞬間に差し出される、そんなさりげない心配りに胸が温まります。半世紀以上も愛されてきた理由は、料理そのものの美味しさだけでなく、こうした人情味あふれるひとコマにもあるのだと感じました。

国境を越えて集まるカウンター

隣に座った旅行者にソースの場所を教えると、笑顔で頷いてくれる…。そんな小さな国際交流が自然に生まれます。国籍も世代も超えて「美味しい」を共有できる空間、渋谷の喧騒の中にあって特別な時間を過ごすことができました。

渋谷に残る語りたくなる名店

再開発で変わりゆく渋谷にあって、「とりかつ CHICKEN」は変わらぬ美味しさと人情味で客を迎え続けています。揚げたての香ばしさ、素朴な漬物、そしてカウンターで交わされる笑顔…そのすべてが激渋グルメの醍醐味。知っていると誰かに語りたくなる、渋谷の路地裏に残る名店でした。

とりかつ CHICKEN
所在地／東京都渋谷区道玄坂2-16-19 都路ビル 2F

取材・文／SYURI

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